第420号:コロナショックと採用活動

この4月1日から新しい仕事場(東京外国語大学グローバルキャリアセンター)に勤務して4日目だが、予定されていた新入職者研修は全部中止となり、緊急事態宣言の対応に追われている。即戦力になってる自分が嬉しくも悲しい。(^0^;

こんな状況下でも、企業は採用活動をコツコツやっていて、就活学生は休む暇もない。就職(採用)活動という業務は、学生にも大学職員にも企業採用担当者にとっても極めて感染リスクの高い業務だ。

そのため、大学が焦ってオンライン授業対応を進めているのと同様に、企業ではオンライン選考が急速に増えている。

ある識者も言っていたが、経団連会長も会員企業に採用活動の延期を宣言して欲しい。どんな歯止めをかけても勝手にやる企業はいるが、大手企業の動向には一定の抑止力があるし、それが日本を代表する経営者の矜持では無いのか。パンディミックの加害者になっている自覚はあるのか?この議論の声が何処からも出てこないのが情けない(まあ、トップも経営危機からすれば、新卒採用などかまってられないか)。

ついでに書くと、大学毎に業務の意志決定オンライン授業の進め方がバラバラで、複数企業に勤務する非常勤講師にはエラい負担だ。各大学で指定されるツールもバラバラで困ったものだ。LMS(Learning Management System)のベンチマークやってるわけじゃないぞ(手前味噌だが上智大学の判断と指示はなかなか良い)。

下手なオンライン授業をやるくらいなら、課題図書を30冊指定して、夏休みまでにレポート30本書け、と言った方がよほど効果がありそうだ。文科省だって、この非常時くらい大目に見ろよ。まあ、百歩譲ってこれを機会にオンラインで遊んでみようか位でもいいじゃないか。一度やってみれば、慣れるものだから。

かつて大学講義が半期制や四期制ではなく、1年を通じて30回であった時なら、もっと余裕をもって授業ができていたのかも。大学改革で欧米の細かいサブセット(シラバス、ルーブリック、ナンバリング etc. etc.)ばかりちまちま入れるから却ってややこしくなっているように見える。グランドデザインができていない。

とまあ、ちょっとスッキリした。さて、明日に向けてまた頑張ろう。(^0^)

第419号:不安の3つの原因

大学行事が次々と中止・延期になるなか、大学キャリアセンターで粛々と学生の就職個人相談を受けている。大規模な企業説明会は殆ど中止になっているが、企業も学生も個別にはそこそこ動いている。

授業や就活で不安を抱える学生にいつも話していることだが、どんな時でも人間が不安になるのは以下の三つが欠けている時だ。

1.知識 ⇒だから、勉強しなさい。
2.仲間 ⇒だから、相談しなさい。
3.行動 ⇒だから、動けば悩む暇がなくなる。

*最近の学生は(ああ、嫌な言葉だ)、上記を自分で行わず、「とりあえず」やってきて全部聞こうとする。自分の意見もなしに、ただ知識だけ貰いに来るのは「相談」ではないのだが。まあ、GoogleのAIエンジンになったつもりで忍耐強く教えてあげる(これって、ペッパー君に頼めるんじゃないか?笑)。

これらは就活に限らない人間が生きる上でのセオリーだ。
先に何がおきるか知れば不安も消えるし、仲間と話せば自分だけが遅れているわけではない、変ではないとわかるし、行動すれば脳の機能の一部が取られてフルに悩めなくなる(試験の直前では誰もが焦っているが悩んでる時間はない)。

女子大での就職相談ではいろいろなものがあるが、人気の志望業界をあげるとこんなところだ。

航空(CA&地上)、旅行、エンタメ(映画、イベント企画、芸能事務所等)、出版、ファッション(衣料) etc.

翻って世間を見ると、コロナ状況下で大変な業界ばかりだ。まさか「逆張り」を知っているわけではなかろうが、恐るべき勇気だと感心する(寒心か?)。まあ、この状況がずっと続くわけではないからね。(^0^)

大学というところは、未知の世界に挑戦する「意志」「技術」「知識」を育むところだ。夢に向かって突き進む人には不安など吹き飛ばせるのかもしれない。

第418号:就活で健闘する短大生

採点業務もシラバス作成も終わり、就職相談業務が仕事の中心になってきた。

実践女子大学(渋谷)で日々個人面談をしていると、短大生が多くやって来る。採用担当者時代にもたまに短大生を面接することがあったが、なかなか新鮮だ。短大はどんどん減り、風前の灯火のようだが、中小企業や大手メーカーの一般事務職の求人は意外とある。

面談していて、内定を取る子の共通点は、明るい話し方に尽きる。ちょっとはじけ過ぎてるなー、と感じても意外と有名企業(メーカー)の内定をとってくるのが面白い。(逆に、暗い子は想定外に通ることは殆どない。)

短大生が気の毒に思うのは、入学してGWを過ぎたら就職指導が始まり、夏休みはインターンシップのオンパレードになることだ(勿論、全く動かない子も多い)。

そんな環境でも、面談していて優秀だなあ、と思う子がいる。「頑張ったことは?」に「学業です!」と迷いもなく答えたかと思うと、こちらからのアドバイスには必ずメモを取って傾聴している(ちなみに、傾聴力とは相手に気持ちよく話させる力だ、と学生には教えている)。

時間がなくて聞けないが、どんな家庭で育ち、どんな中高時代を過ごしてきたか聞いてみたくなる。ちなみに、短大生は、高校時代の話しもガクチカにできるのが有利だ。

こんな子が卒業して2年間働いていたら、きっとまた成長するだろう。変に時間を無駄に過ごした学部生と同じ年齢でも2年後には格段の差が付いている気がする。社会の実践ほど強力な教育はない。

しかし、短大生で優秀な子ほど学歴コンプレックスをもっていたりするが、そんなことは社会ではあまり関係ないと思う。本当に気になるなら社会人でまた大学に学びに来れば良い。今は夜間大学院だって放送大学だって、いくらでも機会はあるし、社会に出たら大学の授業(教員の実力)を見る目も肥えるだろう。

逆に、大学は学部生を教えることにもっと力を入れて、先に社会に出た短大生に負けない実力をつけさせなければならないと思う。大学によって、その教育のレベルや方向性は様々だが、人を通じた社会変革・貢献の仕事なのだから。

良い学生と面談すると、こちらの気も引き締まる。
明日も面倒だろうが、頑張ろう。(^0^)

第417号:原因療法と対症療法

原因療法対症療法は、どちらも大事だが、不測の事態では後者でしか対応できない。

だから落ち着かない時期がしばらく続くのは仕方が無いが、こんな時に慌てて変な情報に左右されるのは注意したい。そのプロであるべきメディアが右往左往して過剰反応するのは見苦しい。現代はそうした不完全な情報にアマチュアが更に過敏に反応・拡散するのでこちらの方が脅威の時代だ。

故に、コロナウィルスもマスコミも似た様なものだ。

大学の勉強は原因療法のようなもので、幅広いデータから真理を見極めて長期的な視野で対処を考える。キャリア教育や就職活動は対症療法で、大学の知見を活かして未知の現象に対処する。それには実践力・応用力が必要で、それは教室で学ぶものではなく、社会との接点で体得していくものだ。だからインターンシップには、大学授業との連携(関連づけ)と機会の提供が求められる。

故に、今のインターンシップは殆どインターンシップではない

この時期、採点業務が減るにつれて就職相談業務が増えてくる。これらは限られた時間の中で、文章でのアウトプットと口頭でのアウトプットの評価だ。両方見ていて感じるのは、今の学生はこの実践力・応用力がとても弱くなった。過剰な情報時代で考えずに探す様になって未知の世界に対処する機会を失い、他者に聞いてばかりになった。

故に、大人は言う、自分の頭で考える人が求められる。

果たして大人の言うことが正しいかは不明だが、老若男女を問わず明らかなことは、人間は知らないこと嫌いなことを、役に立たないもの意味のないものと思いたがるということだ。

故に、向き不向きも苦手も、やってみてから言うんだよ!

第416号:通年採用の本当の意味

*これまでダイヤモンドHR社のコラムとして書いてきましたが、今回より個人的に気楽に幅広く書きます。(^0^)

期末試験の採点が大詰めだ。今年度は企業が採用活動を秋学期の授業期間中にまともにぶつけてきたので、履修放棄の学生が急増した。既にメディアでも騒がれ始めているが、規制廃止した以上、これはどうしようもなく、今後も益々、盛んになるだろう。慌てて「1dayインターンシップは遺憾」とか言い出したって、何を今更だ。

企業側にも居たし、大学側にも居たし、いまは中間の立場(やや大学寄りというより学生寄りかな)にいるので双方の言い分はわかる。一番の被害者は学生のはずなのだが、中には加害者同様に内定した企業のエージェントになっていたりして益々カオスだ。

3年生で既に内定を得た者がだんだん増えて来た(就活を止めたわけではない)一方で、「これから就活始めるんですが、何から始めたら良いですか?」と相談に来る者も多い。

*「企業が絞れない」という学生相談が多いが、聴いてみると絞るほど多く回っていないのに「絞る」という発想(日本語?)が変だ。今の学生は、最初から「絞って」無駄をしないようにと考えてるね。こういう学生は「無駄の効用」を知らずに他者に聴いてばかりだから、いつまでたっても無駄が続く。

多くの大学を見ていると、企業は明らかに高偏差値の大学からアプローチしてくる。それは世界でも当たり前のことだ。

企業が通年採用にする一つの結果(「狙い」とまではいえないだろう)は「採用期間の平準化」だ。経団連の企業が言うように、優秀な学生を早期に囲い込まないと外資系に奪われる。そこに決着が付いたら、一般採用を始め、最終人数調整の採用に向かう(採用活動で重要なのは、何時始めるかより、何時終われるか、なのだが)。

結果、大手企業の新卒採用は、五月雨式(文字通り5月頃まで?笑)続くことになりそうだ。影響を受ける中小企業は、その前後で必死に動くだろう。(そうか、それでこの冬は晴れ間が少ないのか。笑)

これから「通年採用」の本当の意味がわかってくるだろう。

それは、1社が1年中、採用活動をしているという意味ではなく、世の中の企業の何処かが常に採用活動をしているということだ。市場全体からみれば1年中オープンしているということだが、プレーヤーは時期によって変わる。(1年中やっているのは黒に近い灰色の企業だ。笑)

学生側からすれば、常に誰かが就活をしていることになる。

学生にとって悩ましいのは、情報の非対称性の激しい労働市場で、何時始めて何時止めるかを常に自分で考えて決めなければならないことだ。中高大学受験と違って、周りが決めてはくれない。それが「自分の頭で考える」ということだ。

時間が経てばわかるだろう、新卒一括採用の学生にとっての最大のメリットは、企業の採用活動時期(ゲートの開く時)がわかることだ。中途採用の様に、何時ゲートが開くかわからない採用市場では、エージェント(人材紹介)に頼る人が増えてくる。そうして、米国型の通年採用労働市場になっていく。

ただ、本当にこんな経済学的な理論で動くだろうか?
法学的にあるべき姿を取り戻すことができるだろうか?
政府は社会学的に無責任に傍観するだけか?

そして採点は続く・・・。

第415号:確実に生き残れる者は、変化に対応した者

2002年06月28日号の創刊から18年間書き続けてきたこのメールマガジンも今回が最終号となりました。ご購読戴きました大学就職関係の方々には厚くお礼を申し上げます。振り返って見ると、学生の就活も企業の採用活動も、変わったところもあれば変わらなかったことも多いです。
果たして大学も企業も業界も『進化』をしているのでしょうか?最終回のコラムにあたり、振り返って考えてみたいと思います。やや長くなりますが、お付き合い戴ければ幸いです。

以下は17年前のこのメールマガジンで私が書いたコラムの抜粋です。

 ▼「早期化、長期化、集中化、多様化、通年化」(2003年3月号:第18号抜粋)

ここ数年、就職シーズンは「早期化」と「長期化」の傾向にあることは周知のことですが、昨年はそれに加えて選考時期の「集中化」がおきました。1~2月の広報活動の後、3月に多くの企業が選考活動を始めたため、応募者においては面接スケジュールが重複し、多くのエントリーを行っていた学生は日程調整に非常に苦労しました。その結果、広報活動時には学生からのエントリーを十分に集められたと安心していたところ、いざ蓋を開けてみると欠席が多く、面接応募者を集められなかった企業が続出しました。昨年、選考活動の時期にも多くの学生を惹きつけられた企業は、広報活動からこまめにいろいろなメールを送ったり、インターネット上でのコミュニケーション活動(バーチャルOB訪問等)を行ったり、応募者との距離が離れないように配慮していたそうです。

今年は、そういった企業の更に先を行こうと1月から選考を始めた企業もあれば、逆に3月~4月の選考集中期に第一希望の企業を不合格になった学生を狙って、今から5月~6月の募集があることを告知し始めた大手企業も出てきています。また採用選考方法も、通常の面接をやめてインターンシップ応募だけに切り替える企業が出てきており、今年の企業の採用活動は選考時期と選考方法に「多様化」の傾向が出てきているようです。

こういった企業が増えてくると、これから採用市場の「通年化」が起きてくることが予想されます。「通年採用」という意味は、一企業において新卒採用と中途採用の区別が無くなり募集人員が出た時だけ求人を出す、良い人材を見つけた時だけ採用を検討する、というやり方を指してきましたが、今後は年間を通して採用活動を行っている企業が就職市場に居る、という意味に考えた方が良いのかもしれません。学生にとっては選択機会が増えることになりますが、ストレスに耐えて視野を広げるという能力が求められてくるでしょう。マラソン・ランナーのように頑張って欲しいものです。

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如何でしょう?就活・採用活動時期は異なりますが、流れは今と変わらない様に見えます。一方で早期化から通年化の流れは17年かけて変わってきたといえるかもしれません。このように変化には、定期的に繰り返す景気循環的なものと、構造そのものが変動して元に戻らないものとがあります。

先日、有名企業の役員で採用選考の最終決定者とお話をする機会がありましたが、開口一番「うちの人事が採用面接をドンドン入れてくるので多忙でしょうがない。なんで今年はこんなに早くやるんだ!年末年始の多忙な時期にお客さんと会えないし、学生にも大学にも迷惑だろう。」と憤慨されていました。この企業の人事部長によると「他社もやっていますので、うちもやらないと出遅れるのです。」と役員の言葉に耳を傾けないそうです。これは今の企業の採用活動が横並びで変化しない背景ですね。

大学側から見れば誠に迷惑な話ですが、新卒一括採用とその根底にある日本型メンバーシップ雇用が減少していくのを止めることはできないでしょう。政府は経団連の採用ルールの廃止に変わるものを考えると言いましたが、今の政府が「働き方改革」の旗の下に新卒一括採用を廃止しようとしているのですから何もできないのは当然です。

翻って大学側から大学らしく、需要供給という経済学的視点で見れば対処策は考えられます。需要(消費者の要望⇒企業の求める人材)は多種多様で統一することは不可能ですが、供給(提供する製品⇒大学が輩出する人材)の仕様は物理的に限られているので制御可能です。つまり、もし今後何らかの就活・採用ルールが設定されるとすれば、それは供給する大学側が鍵を握っているということです。通年採用がグローバルに求められているのだとすれば、大学もグローバルな仕様である学生の学習環境・時間を守り、しかるべき時期(最終的には卒業後)にするというグローバル型通年採用の対応を検討すべきでしょう(現実にはインターンシップと同じく「日本型」通年採用になりそうですが)。

もっとも、大学側も企業と同じに「周りがやるからやる、やらないからやらない」という状況であるなら、20年後も同じでしょう。いや、10年もすれば少子化という構造変動は確実に進み続け、大学は変化を余儀なくされていることでしょう。確実に生き残れる者は、変化に対応した者です。

大学は、過去の知見を大事にすると同時に、未来を創造するクリエイティブな場だと思います。皆様の未来も仕事も、他者に委ねるのではなく、自ら切り拓くことができると祈念して、最後のコラムの筆を置きたいと思います。ここまでご購読戴き誠に有り難うございました。

追伸:これまでのコラムのバックナンバーは、以下の私の個人的サイトに保管しています。キーワード検索もできますので、何かネタが欲しいと思われた時のヒントにご利用戴ければ幸いです。学生が読んでも役立つと思います。

▼参考URL:【The 採用最前線!】バックナンバー

http://www.recruiter.jp/wp/

 追伸の追伸:このコラムはここで個人的に書き続けます。
毎週、第二金曜日にアップ予定です。

第414号:大学が社会人基礎力を育成できない理由

経産省の定めた「社会人基礎力」が世に出て15年ほど経ち、企業の採用選考や大学のキャリア教育の指針として活用されています。しかしながら、文科省側からみると産業界からの「外圧」にとられ、大学教員の声を聴いても批判的な意見が多い様に感じます。それは必ずしも否定的ではありませんが、大学にとって育成が苦手または避けたい部分があるからだと考えられます。

社会人基礎力については、釈迦に説法かと思いますが、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力で構成されています。その中で、大学は「チームで働く力」やその責任感を教えることがとても苦手な組織です。「社会人基礎力」を開発した諏訪康雄法政大学名誉教授もおっしゃっていましたが、大学という教育機関は、高学年になるほど卒論という個人作業に集中する教育・学習形態になっていますから。

今まさに卒論の提出・審査時期で、最終学年の殆どの学生は秋からずっと眠れない夜を過ごしてきたことでしょう。多くの大学生にとって、卒論のような論理的な長文の文章を書いたことはなく、生まれて初めての孤独な戦いを経験してきたはずです。多くの伝統的教員は、「卒論の効」として難題を乗り越えた自己効力感にもつながり、社会でも通用する力だと主張されます。その真否はともかく、こうした教育・学習形態では「チームで働く力」は伸ばせません。つまり、ここが大学教育の弱点です。

ここを補完するために、熱心な指導をする教員は、ゼミの3年次に5~6人のグループで共同研究をさせ、チームで論文・ポスター発表・プレゼンテーション等を行わせています。しかし、この指導方法は非常に手間暇のかかるものであり、なかなか取り組まない教員が多いです(それ以前にゼミや卒論もない学部もありますが)。結果としてそうした演習にあたる部分を、外部の教育業者にPBLアクティブラーニングアウトソーシングを依頼するという形態が増えて来ています。

大学内のリソースだけで対応できないものは、外部の知恵を取り込むのは現実的だと思いますが、大学教員が面倒に感じてサジを投げ、その始末をキャリアセンターや就職課が「キャリア教育」と称して安価な非常勤講師を調達して補完しているのは困ったものです。アウトソーシングする場合でも、正課授業との関係性を明確にして行わなければ就職セミナーや自己啓発と同じです。入試広報では素晴らしく見えるけれど実態はともなっていない、というのは企業採用広報も似ているかもしれませんが。

少子化が本格的に進み、大学環境も企業経営も着実に厳しくなるなか、相互が連携して補完しあい、無駄な経費を削減して本当に大事なところに投資する。大学にとって苦手なチームワーク力チームビルディング力を発揮できれば、決して夢物語ではないでしょう。そうした初夢の様な理想を、形にしていくような新年の始まりになればと思います。

第413号:企業の採用活動のニュースランキング

今年も残り1週間を切りました。私見ながら、今年の企業採用活動のニュースランキングをあげると以下のようになりそうです。これらの背景にあるのは社会の大きな構造変動で、数年後に振り返っても今年が大きな転換点だったと位置付けられそうです。令和という新しい時代が始まったように。

1.企業の採用ルール廃止
2.インターンシップでの早期選抜採用
3.内定辞退者予測サービス事件
4.新卒人材紹介業の発展
5.通年型採用の試み

なんといってもトップニュースは、経団連の採用ルール廃止です。これが本格的に動き出し、2番目のインターンシップという名の早期選抜採用を促しました。その次に来るのは、内定辞退者予測サービス事件です。これは一部の企業の不祥事ですが、情報化社会の根幹に関わり業界全体に大きな影響を及ぼしました。新卒人材紹介業の発展通年型採用(1年生から応募できる等)は、存在そのものは目立ちませんが、着実に拡大してきています。

これらの諸ニュースの起因になったのは、やはりトップの採用ルール廃止だと思います。これによって企業と学生の動きが大きく代わり始め、過去にない様々な現象を引き起こしたのでしょう。採用ルーツの設定や廃止は、過去に何度もあったと語る方もいて、歴史は繰り返すだけだと言いますが、私はもう採用ルールは復活しないと思います。その理由は、採用ルール廃止の更に根底にある要因が根本的に異なるからです。

これまでの過去の採用活動の変化は景気動向の循環的な変化でした。しかし今回の少子高齢化という「人口構造変化」とインターネットの出現による「情報構造変化」は、日本社会の構造そのものが変わってきた過去に例のないことです。これらの社会インフラ変化は不可逆的な構造変動です。(もっとも、その余震は10年くらい前から現れていました。それらが大地震になってきたのが現在だということです。)

経団連の対応も、かつては「採用活動のため」の方針であり、大学や学生に配慮したものでしたが、今回のものは「終身雇用廃止のため」(新卒採用は、終身雇用制の一部分です)の戦略であり、企業に配慮したものです。企業にとってのライバルも、日本国企業から通年採用が普通の外資系企業となりました。

企業採用担当者は先の見えない状況で闇雲に早期採用活動に走っているようです。しかし、こうした時期こそ目先の情報だけではなく冷静に状況を分析することが重要です。企業採用担当者同士は競合するので意外と周りが見えづらいのですが、皆様には学会や研究会の知見がありますね。先日発行された以下の文献は、現状を各分野の視点からよくまとめていると思います。ご覧戴ければ今後の活動の参考になると思います。さて末文になりますが、どうぞ皆様も良いお年をお迎え下さい。

参考URL:
「IDE現代の高等教育 NO.616「就職秩序の模索」」2019年12月号(IDE大学協会)
https://ide-web.net/newpublication/blog.cgi?category=001

第412号:内定辞退者予測サービス事件-3

リクルートキャリア社の定辞退者予測サービス事件について、去る12月4日に内閣府外局の個人情報保護委員会が、リクルート社及びリクルートキャリア社と利用者であるクライアント企業35社に対して行政指導を行ったとの広報がありました。更に11日には、厚生労働省からは職業安定法による行政指導も行われました。この発表で実名が明らかになった企業には猛省を促したいところです。こんな裏技を使わなくても、内定者をフォローする方法はいくらでもあったことでしょう。

採用選考中で内定辞退可能性の高い応募者をスクリーニング(排除)する手法と、内定後に辞退防止のフォロー(確保)をする手法とは似て非なるものがあります。余程の有名企業でない限り前者に手を出すところは少ないと思いますが、某有名企業の採用担当者は「当社では役員面接に第一志望でない学生を招いたら大変なことになる」とトップの顔色に恐々としていました。そうした企業がこのサービスに手を出したのかもしれませんが、当該企業の殆どが「採用選考には使っていません」と口を揃えて述べています(どこまで信用できるか調べようもありませんが)。

一方で、内定した学生をフォローするのは採用担当者にとって重要な仕事です。米国ではリテンション(確保)という名で以前から行われていて、日本でも昔から内定者懇親会等、様々な施策が行われていましたが、本格的な業務として取り組まれてきたのはこの10年位かと思います。

私が企業時代に行っていたのは、内定者向け社会人研修です。社会人になったら必要な労働法や経理の知識、会社独特の文化を教える経営セミナーや、社内TOEIC試験への無償参加等を行っておりました。狙っていたのは学習効果より、社員と内定者との接触機会を増やして入社前の不安を消し、企業の実力を教えて入社意欲を高めることでした。そうした濃いコミュニケーションを通じて、内定者の辞退可能性を見極めていたのです。内定者向け企画は自由参加にしておりましたが、わかりやすいもので、内定辞退確率と企画参加率はほぼ比例しておりました。

人事仲間の他企業では、内定者に入社まで一定の奨学金(毎月5万円程度)を支給していました。その企画を始めたキッカケは、勉強不足で卒業できず内定取消せざるを得なかった学生がいたことです。内定後にアルバイトに没頭しすぎて大学の勉強を甘くみていたそうで、奨学金支給の条件にはアルバイトを止めて勉強に集中すること、とされておりました。無事に入社できたら奨学金は返済不要にしていましたが、そのため内定辞退する学生は確実にこの奨学金の受け取りを辞退していたそうです。

少子化の現在、この内定者奨学金を導入する企業が増えて来ています。その狙いや内容は、多くの大学生が抱えている大学授業料奨学金の返済を支援したり、福利厚生の一環として行ったり様々です。変な裏技企画に手を出すよりも、こうした施策に知恵を出して取り組んでほしいものですね。学生にも感謝されますし、何より採用担当者の精神衛生上にも有用です。

参考URL:

「株式会社リクルートキャリアに対する勧告等について」2019/12/4(個人情報保護委員会)
https://www.ppc.go.jp/news/press/2019/20191204/

「リクナビ「内定辞退率」問題、りそなHD、京セラなど利用企業にも行政指導などの方針」

2019/12/4(山本一郎氏:Yahooニュース)
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20191204-00153610/

「内定期間中もiPad貸出」(株式会社武蔵野 福利厚生)
https://recruit.musashino.co.jp/working/welfare/

第411号:早期採用選考は、採用担当者の訓練

早くも秋学期も半分以上終え、学生の勉強の秋も集大成の時期に・・・、と言いたいところですが、今年度は異変が起きています。企業主体のインターンシップが、頻繁に開催され授業を欠席する3年生が急増しています。しかも、インターンシップという名ばかりの早期母集団形成の採用活動になっていますから。

経団連ルールがなくなった初年度ということで、想像はしておりましたが、これだけ授業で可視化されると悩ましくなります。私は複数の大学で非常勤講師や就職ガイダンス、就職相談員(キャリアカウンセラー)をやっていますが、高偏差値の有名大学ほどインターンシップへの勧誘が多くなっています。上位校の学生は、山の様な案内メールの取捨選択とスケジュール調整に追われていますが、中堅以下の学生は、何事もないように大学祭に夢中になっていたりします。

学生の秋学期履修登録授業出席にも大きな変化が出てきました。先輩からいろいろアドバイスを貰った学生等は、3年生の秋からインターンシップが増えることを聞いているので、私の授業の様に出席がうるさく授業外課題もある科目は避け、いわゆる「楽単」を中心しています。そうしたことを気にせず私の授業を履修した学生は、出席に苦労して(私は就活やインターンシップによる欠席は認めず、休んだ場合は補講やレポートを課します)、昨年度は殆どいなかったリタイア授業放棄)者が17%、更に出席日数が厳しそうな学生も17%出ています。おそらく30%は単位未修になるでしょう。

どんなに「勉強は学生の本分だ」、という懐かしい説教をしても効果はないでしょうし、企業の囲い込みもますます進むと思われます。最近の「名ばかりインターンシップ」では、終了後に学生に個別のメールが届き「貴方のインターンシップでの言動は有望だったので、内密に早期優遇の選考を案内します」と呼び込まれます。現実的にはインターンシップに参加しなくても、その企業への門が閉ざされたわけではありませんが、学生としては千載一遇の機会として飛びつきたいでしょう。

一方、企業側からすると、有名校の学生を早期選考する作業は、学歴フィルターも似ていますが、採用選考の業務を考える上ではどうしてもやりたくなります。というのは、今のネット時代の新卒採用方式では、どうしても採用選考開始時期が集中し、一気に応募者が来るので対応がこんなになるからです。インターネットでのコンサートチケット販売が開始日に応募が集中し、サーバーがパンクすることがあるのと同じです。

つまり企業の早期優遇選考は、応募者数の平準化という意味があるのです。そして、それは来たるべき(?)通年採用へ向かうプロセスといえるかもしれません。通年採用になると、応募者のキャリアに応じて企業の対応にも差が出てきます。即戦力の学生(日本では殆ど不可能だと思いますが)には、応募段階で早期に選考プロセスが汲まれ、更に面接の評価に応じて賃金や配属等の高処遇が決定されます。

世間では「新卒採用は時代遅れで通年採用に向かうべきだ」という言説が広まっていますが、そういう方々に中途採用と同じ通年採用で就職・転職したことがあるのか、本当の通年採用をやったことがあるのか?と問いたくなることがあります。その目線で見ると、今の早期囲い込み新卒採用しかやったことのない企業採用担当者(日本は中途採用の経験も転職もしたことのないピュアな採用担当者が意外と多い)の訓練になっているのではないでしょうか。全員が初心者ですから、学生も大学も企業も当分、混沌とした状態は続きそうです。

Just another Recruiting way