第198号:リクルーター制度対策

最近、リクルーター制度の話題が良く出てくるようになりました。私の本業である採用コンサルティングでも、企業の方からリクルーター制度の導入や、リクルーター育成研修の依頼を受けることが確かに増えてきています。なかなか実態の見えない採用手法ですが、その背景について見てみましょう。

 

まずリクルーター制度の目的ですが、やはり企業の採用広報活動が第一です。それもマスメディアを使って不特定多数に知らしめるものではなく、特定の対象層に対して選択的に行うもので、これこそが採用広報と一般の企業広報・広告との大きな違いです。採用活動ではあまり広範囲に宣伝を行うと、応募者が増加してその後の採用選抜コストが増加してしまいますから。

かつては広範な広報活動によって多様な人材に出会えるメリットもあったのですが、時代が変わってきました。ここ数年の盛んな不況ニュース報道に煽られた「不安&とりあえず指向」の学生意識、簡易に応募が可能になったIT環境等の背景によってプレエントリー者数が数倍になり、採用担当者は戸惑いの方が大きくなってきました。

エントリーシートやグループ・ディスカッション(GD)による応募者増への対応も、年々、大変な作業になってきています。これは近年のGDの参加人数・選考時間の変化を見ていても明らかです。数年前のGD導入期では、1グループ6人の応募者に対しGDタイムは50分で選考者は2名というものが平均的でしたが、最近の例では1グループ10人でGDタイムは30分、更には1グループ6人を同時に5グループで30分(しかも選考者は2名)という企業まで出てきています。

 

このように、Webサイトによる集団形成&選考活動の非効率化の対策としてリクルーター制度が復活してきているわけですが、率直に言えば、これはかつての「指定校制度」の復活です。このご時世、企業側から「指定校制度」とは言いにくいですが、どこでも「若手社員が出身大学を訪問して勧誘する。」という表現になっております。

 

こんな状況になると、採用実績の無い大学にはリクルーター訪問がないわけですから、就職課としては何らかの対策が必要になりますね。幸か不幸か、採用担当者のWebサイトによる集団形成の比重低下に反して、大学内セミナーへの参加意欲は高まってきています。リクルーターが出身校を回るのに対して、企業採用担当者は参加費用のかからない大学内セミナーにはますます積極的に動いています。そこに一工夫をして、ただ会場を用意するだけではなく、招致したい企業の志望度の高い学生を予め募っておく等の仕掛けがあると良いと思います。例えば、今の大学内セミナーでは学生がまず企業の説明を聞いてから志望度を高めて応募するという流れになっていると思いますが、事前に(第一希望でなくても)志望度の高い学生が一定数集まっているということがわかれば、企業も訪問する気になるでしょう。勿論、学生に対しては企業・業界研究のための事前学習が必要ですので、それをキャリア教育としてしっかり指導しておく必要があります。その学生達が大学側の企業誘致リクルーターになるような。

 

何処の大学にも有望な人材がいることは採用担当者もわかっています。採用担当者の悩みは、その有望な学生に出会う確率を高めることですが、その対策がリクルーター制度になってきたわけです。いつまでも受け身でいる学生・大学には徐々に企業からのコンタクトが減ってくる恐れがあります。是非、一歩進んだ企業誘致をしてみて下さい。