第250号:AKB48型とPerfume型のES

メディアに登場するアイドルにはいろいろなタイプがありますね。昔のように一芸に秀でた技を提供するタイプもあれば、マルチの才能を発揮するタイプもあります。どちらが良いかというのは好みの問題で正解はありませんが、今が盛りのエントリーシートを見ていると、大学生の好みと採用担当者の好みの違いはハッキリしているように感じます。

私はTVの芸能番組は見ませんので最新のアイドルの動向や人気の曲などはわかりませんが、キャンパスにおける大学生の話題や、放課後にチームで踊っているダンス・サークルを見聞きすると、何となく傾向はわかります。最初は違いのわからなかったAKB48Perfumeも区別できるようになりました。たまたま研究仲間にこの2チームの違いで修士論文を書かれた方がおられましたので、指導を仰いでみたところ、成長する過程を応援することを楽しむアイドルチームがAKB48であり、完成された踊りを応援するのがPerfumeだということです。更に、ファンの年齢層が若い(大学生層)のがAKB48で、わりと中高年にも指示されているのがPerfumeだそうです。

ここで、なるほど!と思ったのは、最近のエントリーシートの内容と同じだということです。大学生の書く自己PRは、結果よりも過程に重点があるものが多いです。自己成長をアピールしたいのですね。「頑張ったことはなんですか?」という問いに対して、自分の内面の葛藤や悩みに挑戦している姿勢を詳しく書いてくる人が多いです。そのバリエーションも多種多様で、まさにAKB48型です。

一方、学生より年配である採用担当者の好みは、やはり結果・成果・具体的行動を求めているPerfume型と言えるでしょう。それはエントリーシートの設問を読めばすぐにわかります。下記のとある有名企業のエントリーシートの設問をご覧下さい。

・あなたが決断を迫られた最大の場面はどのような時でしたか。また、そのとき、あなたはどのように考え、行動して決断したか、記述して下さい。

・あなたの過去の経験の中で、新しい発想、経験、機会や物事の仕方を探究して地域や組織、人びとに変化・変革を起こした事例を記述して下さい。

・あなたが目標に対してリーダーシップを強く発揮し、主体的に周囲の人と共に成果をあげた事例を記述して下さい。

・あなたが自分と異なる価値観を持った人たちと協働して目標を達成した経験について記述して下さい。

この4つの設問で求められている「行動」「決断」「経験」「成果」「事例」「達成」という単語のオンパレードから、内面の成長プロセスよりは外面のアウトプットを求めていることは明らかです。

ということで、趣味の世界ならともかく、企業に提出するエントリーシートなら、プロセスの後に来るアウトプットまでしっかり書いた方が良さそうですね。大学生のパフォーマンスに期待しましょう。

第249号:登録を促す就職ナビサイト

「今年は母集団形成が異常に順調なんだよね。」つい先日、馴染みの採用担当者から伺った言葉です。かつての理工系推薦制度のような大学との強力なパイプがあったり、人材紹介業等のアウトソーシング等を使わない限り、採用担当者にとって自社へのエントリー数(母集団形成)は重要な問題です。ところが今年は、いくつかの同規模企業の採用担当者から同じような話を伺います。さて、これは正直に喜んで良いものなのでしょうか・・・?

 

この話を伺った企業は経団連には加盟しておりませんので、倫理憲章にはこだわらずに既に採用面接を始めています。企業規模はそれなりに大きさですが、あまり知名度が高い方ではないので、例年、母集団形成に苦労されています。ところが今年は、Webエントリー数、そこからセミナーにやってくる確率、更にセミナーから採用選考面接に進む学生が殆ど辞退なくやってくるそうなのです。

 

少し気になったので、就職活動中の学生に尋ねてみたら、面白いことを言っておりました。「最近の就職ナビサイトは、企業への登録数が少ないと『あなたはエントリー数が他の人より少ないのでもっとエントリーすべきです。』というメッセージが出るんですよね。プレッシャーをかけられてるようで、気分わるいです。」

*ちなみにこのシステムは、新卒だけではなく転職(中途委作用)のナビでも使われています。

 

なるほどですね。こんなメッセージを毎日見せられたら、自分のペースをしっかり持てる学生ならば気にせず無視できるのでしょうが、気弱な学生は焦っていくつもエントリーすることでしょう。実際、私の教えている女子大学の真面目な学生も慌ててエントリーしまくっています。この現象の背景にあるのは、就職情報企業に対して厳しく募集段数を求める企業採用担当者のニーズです。これは就職ナビサイトだけではなく、最近なかなか学生が集まらない合同企業セミナーでも同様です。せっかく費用をかけて出展したのに、肝心の学生来場数が少なくなって主催者は苦労しています。

 

就職ナビサイトが広報ツールとして登場してもう20年近く経ちました。初期の頃の広報ツールから母集団形成ツールとなり、今はマッチングの機能まで備えてきています。もはや就職ナビサイト無しに企業が採用活動をすることは難しいです。その反面、物心ついた時からITの恩恵を受けている若者には、もはや就職ナビサイトも特別な存在ではなくなり、こうした後押しやてこ入れがないと動かなくなってきたのかもしれません。mixiにfacebookにLineと、さすがに全部は使い切れていませんからね。

 

さて、母集団形成が今のところ順調だというこの採用担当者の方は、続けてこんな話しをしてくれました。最後にそのままお伝えしましょう。

「正直、早く開始して確かに良い学生は集まりやすいけど、逆に全く慣れていない学生も多く、きっともう少し練られれば良い物を持ってそうなのにと感じるケースも多々あります。おそらく今後は早目に内定出しても、結局他社に逃げられるケースが続出し、結局グダグダ続けるはめになるんじゃないかと思ってはいます・・・。」

この採用担当者の懸念が当たらなければ良いのですが。