第252号:採用担当者にはどう聞こえるか?

採用担当者がもっとも嫌うというか、面接の仕事で非常に辛いのは、同じことを何度も聴かされることです。同じ作業をひたすらに強制させられることは、チャップリンのモダンタイムズではありませんが、苦痛以外のなにものでもありません。しかし、採用担当者は面接に面白さを求めているわけでありません。学生の皆さんには自分の話が(大勢の学生の中で)どう聞こえるのか?を考えて欲しいと思います。これは経営戦略でのマーケティングにも通じる基本的な仕事力でもありますから。

 

話している内容が同じでも、表現方法が異なるだけで印象はガラッと変わりますし、評価も変わります。ちょっと実例でみてみましょう。

 

「~では誰にも負けません」

とは学生が本当に多用する表現です。これを採用担当者目線(ではなく耳線?)で聴いてみると、前向きに評価すればプライド・自意識の高さとして感じられますが、何度も何度も聴かされるとつい、「なんで誰にも負けないと言えるのか?証明できる事実はあるのか?」と受け止め、客観性の欠如というネガティブな評価になります。

 

「~には自信があります」

上記より少し控えめな表現ですが、前向きに評価すれば個性・自負を感じます。ネガティブには上記と同じく、「どれだけ凄いのか具体的に示してみろ!」となります。

 

では、これはどうでしょう?

「~の難しさを痛感しました」

こう話す学生は意外と少ないです。上記と違って、物事の捉え方の客観性(自己評価)や謙虚さを感じます。学生が社会に出る前に持っておいて欲しい感覚とは、根拠のない自信ではなく、事実をしっかり見据えて自分を客観的に評価出来る能力です。更に、そこからどんな対策や課題が見えたかがあれば、なお良いです。

 

以上、同じ経験をもつ学生が3通りの表現をした場合、それぞれに印象が変わります。勿論、アナウンサーや接客業の採用でない限り、こうした話し方の工夫だけでは最後まで通らず、やはり学生時代に何を具体的にやってきたのか、で決まります。イマドキの大学生が大好きな「自分らしさ」ですが、それは何なのかを、自分の視点ではなく相手の視点で考えて表現し、社会の門番たる採用担当者のゲートをくぐってほしいと思います。

 

最後に、上記は私の個人的な視点であり、採用担当者によって受け止め方は千差万別ですが、表現の違いで印象が変わる、だから相手目線になる、これはどの採用担当者でも同様に求める能力だと思います。また、上記表現はここで書いた時点で、もう大勢の方々に伝わっていますので、使うなら早い者勝ちです(笑)。

 

第251号:中小企業経営者の採用談義

先日、「中小企業経営者の求める人材像を探る」という座談会を見学して参りました。これは金融機関が設定したもので、規模は小さいながらも優良な中小企業の経営者(社長)数名が新卒採用について自由に議論して貰う企画です。周知の通り、大企業と中小企業では、告知の仕方から選考に仕方、更には入社してからの人材育成まで全く異なります。大企業向けに「作られた就職活動」しか知らない学生には未知の世界でしょうが、大学生の進路指導にとっても今後の課題だと思います。

 

今回、コメントされていた経営者は、資本金3000万円、採用規模は若干~10名程度の製造業の方々で、中国等の海外に積極的に事業展開をしてます。歯に衣着せない中小企業経営者(社長)の話は、どれも個性的で興味深く、なるほどと思わされますが、共通点も多々あります。異口同音に語られていたコメントは以下のようなものです。

 

▼女子学生が元気

・女子が素晴らしい。やりたいことをしっかり話す。(男子はモゴモゴ)

・女子学生は採用募集告知がなくても飛び込みでメールでアプローチしてくる。

・中国の女性は男は頼りにならないから頑張る。あのハングリー精神は見習って欲しい。

・性別で能力差があるというよりは、これまで男性中心だったから相対的に目立ってきたのでは?

 

▼専門性をしっかり学んでいて欲しい

・就活をやり過ぎた就職マシンのような人材はいらない。

・人間の芯がなくて、表面だけぺたぺたと何かを貼り付けたような人材はいらない。

・基本的な学力が弱くなっているような気がする。新しい学科も良いが基本をしっかり。

 

▼チャレンジ精神がほしい

・常に自分から挑戦して全力で実行する人が良い。(シンプルだけどこれにつきる)

・起業家が少ない。起業家精神の作れる人を採用したいし育てたい。

・信用金庫は転勤が無いから入ったという新人は情け無い。

 

▼大手就活サイトは使わない

・大手就活サイトをやめて大学に直接コンタクトしている。(数が多くてもダメ)

・大企業が終わった後に、大学内セミナーを直接求人している。

 

元気な中小企業の採用方法を見ていると、新卒中心だけで採用活動をしている大企業がとても疲弊しているように見えます。「個性的な学生が少ない」と嘆く大手企業採用担当者の多くが、没個性の採用活動をひたすら続けていることに気づいていません(気づいていても動けません)。

ロート製薬が発信した「脱・とりあえず採用」も、こうした原点に戻ろうという考えなのだろうと思います。前例のないことに試行錯誤しながら取り組んで行く、それは就活学生にも企業採用担当者にも課せられた今後の課題なのでしょう。そんなことを思わされた座談会でした。