第11号:採用活動のアウトソーシング

昨年から目立ってきたのが採用活動へのアウトソーシングの導入です。これまで企業セミナーの受付や繁忙期に派遣社員を導入する程度でしたが、最近は企業セミナーのプレゼンテーションを丸ごと委託するケースが増えています。企業の新卒採用枠が非常に厳しくなり募集数が減少してきておりますが、一方、その舞台裏である人事採用担当者の現場にも厳しい経営環境が現実として押し寄せてきています。

企業の採用枠が減るということは、採用の仕事が減ることで、利益を追求する企業としては当然ながら採用担当者の人員を合理化致します。人員の一部を営業部門に移動したり、これまで採用専業だった担当者が能力開発や人事労務の仕事を兼業するようになってきています。こういった傾向をみていても、現在の不況が構造的なものであることを実感させられます。アウトソーシングの導入もその一環で、この分野の受託企業には売り上げが昨年より倍増しているところもあり、良い業者を押さえるのに企業が苦労することもあります。

アウトソーシングをどの範囲で導入するかは企業の考えによって異なりますが、委託を行う際には無駄な業務を見直して標準化を行うことになるので仕事の効率化は進みます。面接までアウトソーシングを行うこともある外資系企業と違って、日本では「人事は正社員で」という発想がまだ強く、社内アウトソーシングという形で現場社員をリクルーターに動員したり、大企業では人事アウトソーシング会社をグループ内に設立して採用業務を代行させたりしてきました。今の動きはそこから更に進んで、社内と社外のアウトソーシングのコストを比較して判断する、というところまできたということでしょう。

日本企業では面接までアウトソーシングするのはまだ少数でしょうが、これまで担当者の経験や勘に頼っていた選考基準を明らかにしていくということは、成果主義による社員の業績評価を進める人事部としては、当然のことです。うかうかしていると採用担当者自身がアウトソーシングに置き換えられますので、頑張らないといけません。

第10号:コミュニティ型採用活動

きびしい経済状況が続くなか、企業の採用活動にも大きな変化が出てきています。その変化は景気循環型一過的)なものと、構造的継続的)なものとがあります。前者は景気停滞中の間だけ規模を縮小したり停止することで、後者は活動そのものの方法が変わり、景気が良くなっても元には戻らないものです。構造的な変化のひとつに、最近はコミュニティ型採用活動といわれるものが目立ってきました。

 コミュニティ型採用活動とは、応募母集団の形成を求人広報とは別の形で行うもので、典型的なのはアルバイトを経験した学生の中から正社員や契約社員の形で雇用するものです。この手法は以前よりありましたが、採用の主流の方法として意識されてきたのはわりと最近のことです。代表的なのは、外食産業、コンビニエンス・ストアのように、チェーン展開を行いお客様との対面コミュニケーションがある業界です。

コミュニティ型採用活動の企業側の主なメリットは、以下のとおりです。
1.契約社員としての雇用もできるので総額人件費を抑えられる。
2.実際の働きぶりをみて有望な社員を採用できる。
3.採用広報コストを下げられる。

つまり、採用活動にかかる直接・間接のコストを削減し、より有望な人材を会社の業務の中から発掘していこうという発想です。現在、流行っているインターンシップ活動も、広い意味ではこのコミュニティ型採用活動の範疇に入るといえるでしょう。採用に直結させていないインターンシップもありますが、学生も企業もこの期間に自然とお互いの見合いを行っているものです。

先日、日経新聞社が発表した採用意欲が旺盛な新規上場企業の多くは、企業の最重点課題として「優秀な人材の採用」を挙げておりますが、このコミュニティ型採用活動を行っているところが多いです。日本経済の構造改革は進んでいるのかどうか実感が湧きませんが、生き残りに必死で業績を伸ばしていく企業は、採用活動も根本的に見直し、型にはまった採用活動をやめ、毎日の営業活動の中に採用活動を取り込みながら、どんどん形を変えています。自社のコミュニティをどう形成するか、これが今の採用担当者の最大の関心事なのです。