第318号:今年の採用活動トピックス

2015年を現す漢字は「安」となったそうですが、今年もいよいよ残り少なくなりましたので採用・就職活動の大きな出来事を振り返ってみましょう。もっとも、今年は「後ろ倒し&前倒し」の一色に染まってしまった気がしますね。

 

▼2016卒(2015年)採用・就職活動の主な出来事

1.後ろ倒し

2.前倒し

3.ユニーク採用

4.オワハラ

5.内定率好調

 

「後ろ倒し」については、それが本当に良かったのか悪かったのかは判断できません。学生アンケートでは今年と昨年の状況が異なるので(学生は毎年就活をするわけではないので)比較できませんし、今年は前例のない環境変化だったので学生の不安が高まるのは当然のことですから。

「前倒し」の6月決着とは半端な結果になったものです。前倒し賛成派は、3月に戻したかったのでしょうがそれでは流石に採用担当者も業者も対応が間に合わなくなります。もっとも、この「後ろ倒し&前倒し」には採用担当者も呆れています。私が取材した企業からは以下の声を聴きました。

「まったく茶番で議論するのも馬鹿らしい。」

「いつでも良いからコロコロ変えるな。」

「今年もこっそり6月からやっていましたから、何も変わりません。」

それにしても経団連の威光がここまで地に落ちたのは意外でした。というより、経団連も最初から守る気がなかったのかもしれません。

 

「ユニーク採用」は前回のコラムでお伝えした通りです。この傾向はダイレクトリクルーティングを進める企業や採用支援企業の発展によってますます広がることでしょう。一つ懸念されるのは、ユニーク採用は小集団で数多く行われますから、多くの企業が始めることによって学生へのアプローチが増加します。ますます学生が時間を取られることになりそうです。

「オワハラ」も大きな社会問題になりました。先日、ブラック社労士が社員を合法的に解雇するブログで炎上しましたが、労働法を知らず、かつ強い意志で断れない学生には丁寧な指導が求められるでしょう。内定した学生に早く報告をさせるキッカケになるかもしれませんね。

「内定率好調」は、あまり話題にされませんがバブル期並みになった地域もあります。こうした明るいニュースは、学生の不安を取り除くためにもしっかり報道して欲しいものです。

 

私の年内の大学授業も今週で終了しましたが、クラストップ成績の学生が教職課程を諦めたとしょげていました。教職をやると6月の就活とぶつかるので教育実習は辞退すべきだと大学に指導されたとか。他の3年生もインターンシップを理由に授業を欠席し始めました。それも一気に3人、5人と抜けるのでワークショップ形式の授業は成立しませんし、ちゃんと出てきている学生の足を引っ張って支障が出てきています。

いやはや来年も問題のある1年になりそうです、皆様、良いお年をお迎え下さいませ。

第317号:多様な採用手法に込められたメッセージ

最近の採用活動のトレンドは、採用方法そのものを広報手段とすることです。大規模な母集団形成ではなく、自社の求める人材にターゲットを絞り、選択的な母集団形成をすることです。そのため、他社とはひと味違う多様な採用手法をあみ出し、刺激的な広報で惹き付けています。

 

ユニークな採用活動を行っている企業のまとめサイト(こうしたまとめサイトができるということからも、ユニークな採用手法が流行しているとわかります)は文末の参考URLでご覧頂けますが、本当に百花繚乱です。一見、真面目にやっているのかな?と思わされるものもありますが、採用担当者は真剣に取り組んでいるのです。

 

例えば、広告業界である東急エージェンシー社の「顔採用」というのはひときわ目立ちますね。人によっては怪訝に思ったり、面白いと思ったりすることでしょう。これは、あえてネガティブなキャッチコピーを使うことによって目立たせ、これまで広告業界に関心のなかった人にも振り向かせるのが狙いです。そして、こうした人の好奇心をかき立てる行為が広告業界(東急エージェンシー社)の仕事であるとのメッセージが込められています。

 

という意図なので、「顔採用」という言葉を四角四面に捉えておこるような人はこの業界には向かないよ、という選択的広報がなされているのです。勿論、実際の選考で容姿を採用基準にいれているわけではありません。同社の広報サイト(以下URL参照)をご覧頂ければわかりますが「顔採用」の結果で得られるものは、面接希望日が選べる等のものでしかありません。

 

これとは真逆の四角四面型採用手法といえば、チームラボ社の「卒制/卒論採用」でしょう。同社はユニークなデジタルアートの開発で急成長してるいベンチャー企業ですが、東大・東工大の理工系学生達による創業です。そのため、モノヅクリ(システムインテグレート)が基本で、面接で見るコミュニケーション力よりも、論理的にアウトプットを出せる力が重視されます。その資質は卒論の書き方ではっきりわかるわけです。(以前のコラムで書いた通り、これは文系学生でもある程度わかります。)

そのため、卒論をしっかり書かない(書けない)学生は、同社を避けることになるでしょう。

 

このように、採用手法に個性を出すということは「求める人材」のメッセージを明らかにするということです。企業セミナーで「我が社の求める人材像は・・・」等と何処でも似たような要素を挙げるのではなく、採用手法を通じて具体的に示しているわけです。学生にはこうしたメッセージをちゃんと読み解いて応募してほしいものですね。

 

▼【ちょっと変わった】面白い選考方法取り入れている会社【就活】

http://matome.naver.jp/odai/2132949328677520401

▼東急エージェンシー社の「顔採用」(YouTube)

https://www.youtube.com/watch?v=bHTy_0mdCdM

▼チームラボ社「卒制/卒論採用」

http://sotsusei.team-lab.com/