第59号:地上戦線盛んなり。

早いもので今年もカウント・ダウンの季節になりましたが、就職戦線の方は盛況のようです。戦線と言えばイラクですが、大規模戦争は収束したものの市街地を中心とした小規模なテロ活動は未だに続いており、出口の見えない混沌とした状況です。ベトナム戦争でも同じでしたが、大規模な戦いよりも小規模なゲリラ戦の方が大変なようですね。これは就職戦線でも同じなのかもしれません。

採用担当者の業界用語では、インターネット上での採用活動を「空中戦」、企業説明会等を開催して実際に学生とコンタクトする採用活動を「地上戦」と称します。採用戦線は秋の空中戦から始まり徐々に地上戦に主戦場を移していくのですが、今年は最初からかなり「地上戦」の方が盛んです。それというのも、最近は「空中戦」で囲い込んだ(ネット登録してくれた)学生が、なかなか現実の企業セミナーや採用選考に参加してくれないという悩みが採用担当者にあるからです。特に今春は就職協定による集中化現象があったことも大きな影響でした。大勢のエントリーに安心して蓋を開けたところ、出席率が50%以下だったということは珍しくありません。

そのためこの秋から多くの企業が大学に足を運び、直接に学生とコンタクトして印象を深めようとしているようです。まさに就職戦線も「地上戦」に主軸になったわけですね。最近は大学内でも学生の就職支援をする組織が増えてきました。就職課だけではなく、大学の学部毎のゼミ幹事会、OB会、学生サークル、内定者の4年生・・・それぞれの趣旨や目的、主義主張も様々ですが、これもイラクのように各派毎に信念を持って活動しているということでしょうか。

最近の「地上戦」でちょっと気になるのは「キャリア・セミナー」と言う名で開催されますが、内容は殆どこれまでと同じ「企業セミナー」であることです。(そもそも、企業セミナーも業界セミナーも境界は曖昧だと思うのですが・・・。)流石に秋から「企業セミナー」と名付けるわけにはいかないのでしょうが、「キャリア」と名付けるからには1企業知識や情報だけでなく、参加学生が職業教育として何らかの啓蒙を受けることが望ましいと思います。

空中戦、地上戦、協定に主義主張、そして溢れたモノと情報の戦後処理・・・、まさに就職活動は戦争ですね。戦う学生も採用担当者もタフに生き抜いていかなければなりませんね。

 

第58号:某野球選手の就職活動

プロ野球のリーグ統一問題が今年は大きな社会ニュースになっておりました。企業の採用担当者からみていても、「あれは経営者(オーナー)と労働組合(選手会)の問題だよね。」と外野から言いたい放題のヤジを飛ばしておりましたが、実際に裁判所の判断まで求められましたね。さて、リーグの統一問題は楽天の参入決定により一段落致しましたが、その楽天への就職が決まった某選手の最近の発言も採用担当者では話題になっております。

某選手についてはご説明するまでもなく、プロ球団からの金銭授受問題で話題になった有名大学のエースですが、いろいろあった末、無事(?)に新球団の楽天に就職が内定致しましたね。採用担当者で話題になっているのは、彼の発言内容の変化が一般の学生の就職活動での選考プロセスでの発言と全く同じだね、ということです。ちょっと彼の最近の発言を、採用担当者との会話風に書いてみましょう。

▼面接時:

採用担当者「まず志望動機をお話下さい。」

選手君「いろいろありまして野球をあきらめるつもりでしたが、新興企業である御社で活躍して恩返ししたいと思います。是非、貴社に入社(入団)したいです。」

▼内定者面談時:

採用担当者「君は5年後、10年後にどんなキャリアを描きたいの?」

選手君「小さいころから日本で活躍し、メジャーリーグに挑戦するというのが夢でした。貴社で結果を残してメジャーリーグに挑戦できたらいいと思っています。」

採用担当者「え?うちの会社で一生、頑張ってくれるんじゃないの?」

選手君「夢にウソつくわけにはいきません。」

同席の三木谷社長「男だったら世界を目指せ。オレたちはそれよりも魅力ある球団を作る。大リーグでそこそこやるより、このチームで歴史を作ろう!」

*この会話は、半フィクションです。 (^_^;

まあ、彼もフツーの大学生だったということでしょうね。内定を取ったら強いです。ただ、できれば早く大人になって、マナー(というかタテマエというか)も覚えて欲しいと思います。イチロー選手・松井選手ほどの人格者になれなくても、大リーグで活躍したいなら日本を代表する心構えで(今なら在籍大学を代表するような心構えで)礼儀とスマートさを身につけて欲しいものです。新庄選手も言いたいことを言いますが、ジョークとタイミングをよくわかっていると思います。

大リーグ志望というキャリアプランは素晴らしいことですが、彼の会話を聞いていると、「就職活動でよく見る『ホンネ信奉』の自分に忠実な学生のようだね。」と、採用担当者の飲み会で苦笑しておりました。