第163号:2010年卒を支援しよう

梅雨に入りました。夏休みが近付いてくるとサマーインターンシップの告知を始める企業が出てきます。夏休みは採用担当者にとって休息の時期だったのは何時の頃だったのかもう記憶の彼方となりました。しかし、まだまだ忘れてはならないのは、2010年卒業の学生達です。今シーズンの就職戦線の厳しさは、個人の努力だけでカバーできるようなものではありません。企業も大学も連携して支援すべきです。

 

既にいくつかの企業は既に2010年卒の採用活動に見切りをつけて、2011年卒への対応を初めています。だんだんと底が見えてきたこの経済不況とはいえ、2010年卒の採用活動については追加募集を出すほどの判断ができないのが多くの企業の本音でしょう。追加募集を出すには、もう少し実需での景気回復が欲しいところで、それは下半期(10月以降)の経営判断になるのが普通です。

 

経営判断に加えてもう一つ、採用担当者が追加募集をする時にキーとなるのは採用活動の予算です。上半期(4~9月)については仮に追加募集の採用枠が残っていても、採用活動にかける予算が無く、思うように動けない企業があります。周知のとおり、採用活動にかかる費用で大きいのは、募集にかける広告宣伝費と地方への旅費交通費です。緊縮状態にある企業ではこれらが今、バッサリ切られていて身動きができません。

 

こんな時に頼るのは皆様方、大学就職課ですね。少数の採用数なら、懇意にしている大学に対して求人票や自社での小規模セミナーの案内を送ったり、直接電話で学生の紹介や推薦を依頼したりします。

しかし、それもなかなか手間暇もかかりますし、肝心の就職活動を継続中の学生が大学(就職課)に来なければ話になりません。

 

そんな中で、先日報道された明治・法政・中央・日本女子大学の4大学による「スクラム合同説明会」は素晴らしい企画だと思います。4年生に対してこの時期にこうした大規模なセミナーは、なかなか開催されるものではありませんし、規模の大きさは学生と企業のマッチングに効果が大きくなります。

 

国としても、こうしたイベントには緊急に予算を振り向けて支援すべきだと思います。現状のまま2010年卒の学生を放っておいては、大量の大卒フリーターを生み出しかねません。新卒就職で正規社員として就職できないと、その後のキャリア形成に不利になることは既に多くの研究からも明らかにされていることですし、日本の大きな損失です。こうした不況期こそ、日本人独特の助け合いの精神であたりたいものです。

 

 

第162号:貴方を採用する理由が欲しい

今シーズンは応募者増加に反して採用数激減という買い手市場になったため、採用担当者側も選考合格を出すにはかなり迷います。例年に比べて、最終面接で不合格になる応募者が増加しているようですが、これはそれだけ人事部が迷っているということでしょう。採用選考の裏側からこの辺の事情を考えてみます。

 

多くの企業では採用面接が終わったその日のうちにミーティングを行い、各面接者が選考した学生の評価を話し合い、次の選考に呼び出す学生を絞り込む作業を行います。面接の印象というのは意外と早く忘れてしまうもので、当日のうちに確認しておかなければなりませんし、有望な学生は早く選考を進めたいという気持ちもあります。このミーティングでは、面接者は自分が選考進めたい(合格を出したい)学生の何処が良いのかを他の採用担当者に説明しなければなりません。その説明はまちまちですが、何故、その応募者が有望なのかしっかりした理由が無ければ、採用面接者としての資質を問われてしまいます。

こうして二次面接に呼び出す学生のリストができあがり、上位の選考者が面接を行いますが、その結果は下位の採用担当者にフィードバックされ、自分の選考基準を見直したり、上位選考者と意見交換をしたりします。こうしたプロセスを経て、採用担当者は徐々に自分の選考基準を身に付けていくのですが、上位の考課者に合わせていくか、それとも自分の選考基準を貫いていくかは、企業のカラーや採用担当者の性格にも左右されます。

 

いずれにしても面接を担当した採用担当者にとっては、その学生を何故採用するのか、という理由が明らかな応募者は助かります。ですので、実際に「当社が貴方を採用するメリットは何ですか?」とストレートに質問してくる面接者も居ります。

(逆に「不合格の理由が明らかな学生の面接の方が楽で助かる。」とひそかに考えている採用担当者も居ります。)

 

ですから、学生の方に知っておいて欲しいのは、目の前の採用担当者が求めているのは、他の採用担当者を説得するのに有望な理由だということです。それを簡潔に伝えて欲しいと思います。

視点を変えれば、如何に目の前の採用担当者を自分の味方にするかを考えて欲しいということですね。面白いもので、採用担当者は自分が合格を出した応募者についてはつい心情が入り、味方になることが多いものです。というのは、自分が合格を出したということは、自分の判断基準を上位考課者に仰ぐということですから、その応募者は採用担当者の分身のようなものです。

 

というわけで、今シーズン、最終面接でかなり不合格になるということは、その前の人事部の選考で合格判定が多く出ているということです。人事部でも絞りきれず、おそらく紙一重の最終判断が出ているのだと思います。