第355号:「自主性」と「主体性」の違いを問われたら

エントリーシートや面接では、時々、これは何を知りたいんだろう?と思わされる質問を見かけることがあります。最近、学生から聞いたのは「自主性と主体性の違い」でした。これを聞いて応募者の何を知りたいんだろう?これを聞いたところで実証できるのだろうか?と思いました。

とある企業コンサルタントの論では、以下の様に述べられています。

自主性」⇒予め明確にされている課題を(他者に言われなくても)進んでやること。

主体性」⇒目標が明確でなくても自分で考え判断して取り組むこと。

上記では目標設定の有無を判断基準にしています。となると、自主性より主体性の方が上位のようですね。説によっては、自主性が基本で主体性が応用とも述べられています(自主性を身につけた人が主体性を発揮できる等)。

さて、この論に従うとして、それをそのまま面接で学生に問うことで何がわかるでしょうか?経営学のリーダーシップ論の期末試験ならともかく、そうしたピンポイントの質問は単なる知識の有無で、採用担当者の自己満足になるおそれがあります。面接の前にちょっと本屋で見知って受け売り回答できれば、採用担当者の覚えはめでたく「ういやつじゃ!」と(一次選考は)合格するかもしれません。

しかし、結局それは採用担当者が好きなフレーズを知っているかどうかの評価に過ぎません。本当に自主性や主体性を持っているかを見極めるのなら、そうした実績を聞き出すコンピテンシー面接を行う、発揮能力を見るグループワークを行う等で測定するべきでしょう。採用担当者が評価軸の定義(基準)に「自主性」と「主体性」をもつのはなんら問題ありません。しかし、その基準をどんな選考手法で測定するかをもってなければ意味がありません。

誰でも、知ったばかりの知識は使いたくなるものです。例えば、コーチングを習った面接者は「あなたの今の気分は何色ですか?」と聞いて、その色の説明をさせることがあります。これは自己理解のワークで定番の質問で、緊張しやすい応募者をほぐしてみるとか、発想力をみるとか、用意してない回答を見たい等の意図をもってなされるのなら良いですが、そうでなければ単なる面接者の自己満足になってしまいます。そして、一番、恐ろしいのは採用担当者ご自身がそこに気づいていないことです。

まあ現実、こんな問題に直面したら、正解を当てるのではなく「曖昧ですが~」「私見ですが~」と持論を展開できれば良いと思います。説教が好きな採用担当者はきっと解説してくれるので、その反応を見ながら「なるほど~」と共感を見せればきっと結果もついてくることでしょう。そうした対人スキルは社会でも有用ですし、大学の期末試験でヤマが外れても諦めずに発揮して欲しい能力です。

第354号:最新と言われる中小企業の採用手法

大手企業の採用活動は峠を越えましたが、中小企業の方はまだまだです。私の授業では、企業人事の方を招いて学生のプレゼンテーションを評価して戴いておりますが、今週も2社ほどおこし戴きました。両者とも優良中堅企業にも関わらず採用充足率は50%ということで、内定は出しているものの辞退率が高いそうです。そこで、これまでの手法を見直して、新しい採用活動を検討しはじめています。

 

大企業と中小企業の採用格差現象は何時の時代にもあるものですが、構造的に売り手市場になったので学生の大企業指向は以前より強くなり、ますます格差が広がっています。こうした状況下で、以下のような戦略に基づいた中小企業のユニークなダイレクトリクルーティングが流行っています。

 

・応募者に多くを求めず、一つだけ求める。(求める基準の一点集中明確化)

・面白く応募しやすいキャッチコピーで引きつける。(応募ハードルを下げる)

・社員との交流を増やし、人的魅力で引きつける。(個人体験で応募意欲を上げる)

 

要は、ピンポイントで濃い小集団を形成するわけですが、ちょっとネット検索すると百花繚乱に出てきます(こういう時こそ、まとめサイトが便利です)。以下はここで紹介したものもありますが、ますます増殖しています。

 

・麻雀採用(スターティア)

・変態×真面目採用(ピーススタイル)

・終わケド選考(電通)

・顔採用(東急エージェンシー)

・面接ナシ選考(エニッシュ)

・29品のふぐ採用(東京一番フーズ)

・日本一短いES(三幸製菓)

・受験料制度(ドワンゴ)

・卒論/卒制採用(チームラボ)

 

これらを俯瞰してみると、他社のやらないこと、業界初のことを宣伝にして耳目を集める手法は昔と同じで、とりあえず来て貰う集団形成を重視しています。なので、こうした手法は単年度で終わるものが多いですが、逆に手法(選考基準)としても意味があるものは継続して実施されています。

もう一つの傾向は、大学生を対象としていますが、大学の勉強は(卒論採用等を除き)重視していない点です。こうなると大学生としての意義は、大学進学できる身分(家庭の財務状況)を見るくらいになってしまいますが、大衆化時代の大学という場が社会から新たな意義を求められてきたともいえます。今の採用責任者は「大学はレジャーランド」と呼ばれた世代になってきましたしね。

 

▼参考URL:「【ちょっと変わった】面白い選考方法取り入れている会社【就活】」(NAVER まとめ)

https://matome.naver.jp/odai/2132949328677520401