大学の夏休みといえばオープンキャンパスがすっかり風物詩として定着しました。各大学を回る親子連れを見ていると微笑ましく感じます。私も保護者向けセミナーで講師を行いますが、熱心に質問してくる親御さんに対応していると、キャリアの投資相談を受けているようです。こうした機会に、日頃なかなか話の出来ない親子が対話をするのはとても良いことだと思います。
さて、女優綾瀬はるか主演の『義母と娘のブルース』というTVドラマが高視聴率だそうです。先日、この番組で大学受験に関する親子のやりとりのシーンが出てきて注視させられました。高校生の娘は大学受験で「そこそこ知名度のある大学に入れたら」と考えていましたが、義母や友人の「やりたいことを見つけて、それに合わせて大学や学部を選ぶ」という話しに触れてコンプレックスを感じてしまいました。娘の本音では、自分は勉強はできないけれど、献身的に面倒をみてくれるキャリアウーマンの義母の期待に少しでも近づきたいというもので、大学志望動機が幼すぎると感じたのでしょう。
私も義母と似た考えで、高校のキャリア教育では大学・学部という組織の意義や歴史を教え、社会の仕事を教え、その目的にあった大学・学部を選ぶのが基本だと思います。若者はやりたいことが見えないと言いますが、やる気がないのではなく、やりたいこと(社会のこと)を知る機会が少ないからです。プロ野球や甲子園という夢をもつ高校球児が頑張れるように(スポーツを職業にするという難題はちょっと横に置きます)。
しかし、子供が親の期待に応えたいという気持ちもわかります。実際、私の教え子にも、憧れの航空会社CAに内定したのに「先生、本当にこれで良かったんでしょうか?実は私はそれほどCAになりたいとは思っていませんが、母や祖母が喜ぶので。」と語る者がいました。同様の話しは、アナウンサーや教員になった卒業生からも耳にします。
どんなキッカケであれ、仕事に就いたらそこに自分のやり甲斐を見出して職場に定着していく人は多いです。それを自分のものとしないで他責的になる若者はミスマッチを理由に早期離職していくか、または親の期待から卒業して(親の期待を果たして?)自分の夢を見つけて転職していくようです。
私もオープンキャンパス等で保護者向けの講演を致します。通常は大学のキャリア教育について、最近の就職市場や学生の意識等について話しますが、子供との接し方についても高い関心を持たれます。スキルとしてはカウンセリングやコーチングの基本を伝えつつ、その親御さん自身の就労観と子供に対する就労観を考えて貰うようにします。
社会がどんどん成熟していく中で、就労観も社会そのものも大きく変わり、今の子供は今の親とは異なる生き方をするようになるでしょう。就職、結婚、出産、住居の意思決定の内容もスタイルも、保護者が大学生だった30年前とは様変わりしてきています。家族の関係もその話し合いのなかから育まれるのではないかと思います。オープンキャンパスが、親子それぞれのキャリアを一緒に見直す機会になると良いですね。