第312号:就職と結婚との共通点

就活はよく恋愛に例えられてきましたが、10月1日に多くの企業で行われる内定式はさしずめ結納にあたるのでしょうか。ならば、その次に来る結婚のことも考える成長機会にして欲しいと思います。それは大人の恋愛結婚)とビジネスの共通点を知ることでもあります。

就活を恋愛に例えるというのは、そのプロセス(選考過程)を中心に考えることといえますが、大人の恋愛はその後の結婚生活(結果とその先)まで考えることです。恋愛時代は自由に相手を選んだり迷ったり出来ます。しかし、結婚(就職)となると相手は特定され、不自由の中での工夫を考えなければなりません。その場合、以下の3つのポイントが大切です。

1.卒業時期は自分で決める

結婚までの恋愛期間は人それぞれです。小中学校の幼馴染みが結婚相手になる人もいれば、社会人同士の合コンで出会って数ヶ月で決める人もいます(ちなみに私の友人には3日で決めた人がいます)。結婚するための恋愛期間は長い方が良いか、短い方が良いか、こうした議論はナンセンスです。長すぎて飽きてしまった、一目惚れで盲目的だった、いずれにしても自由恋愛期間を卒業して結婚する時を決めるのは自分自身なのですから。

2.自分の言動に責任をとる

結婚に至るのがお見合いであろうが自由恋愛であろうが、結婚後に失敗したと思っても、それを他人のせいにしてはいけません。これは採用担当者の中で良く話題になりますが、入社した新卒社員が「採用担当者にだまされた」と不満を言います。しかし、これだけ情報が社会に溢れている時代で入社前にまったくわからないというのもおかしなことです。仮に採用担当者が巧妙に採用広報をしていたとしても、一つだけの情報だけで意志決定せず、できるだけ調べて決めるのが大人の恋愛です。ついでに言えば、大学でも一次情報(フィールドワーク)の重要性は教えていますが、たった一つだけの情報を一般化しないようにとも教えていますね。

3.意志決定が更に良くなる努力をする

最後に大事なことは、結婚後(就職後)は自分の意志決定が良い方向に向かうよう努力することです。家庭も企業も相手と一緒に作る社会です。考え抜いて最良の選択をしたつもりでも、思い通りにいかないことがありますし、自分自身も相手にとって期待通りの人物ではなかったと思われるかもしれません。だからこそ、卒業は始まりであり就職はスタートだと言われるのですね。少しの失敗で簡単に意志決定を翻したり不満を言っているようでは結婚も仕事も一人前にはなりません。自分の意志決定を本当に最良の結果にする努力がなにより大切です。

内定式が近づいて、多くの採用担当者が期待と不安におそわれながら、内々定を出した学生との再会を楽しみにしています。実は上記のポイントは私が採用担当者としてこの時期に内定者に伝えていたことです。学生には説教に聞こえたかもしれませんが、社会に出る前の学生に大人の心構えを教え、不安を取り除くのも大事な仕事です。採用担当者が求めるのは、こうした大人の恋愛、つまりビジネスができる若者なのです。

第311号:フリーライダーの成れの果て

大学教育では、「アクティブラーニング」が盛んにいわれています。座学だけではなく能動的な学習が大事だという点には異論はありませんが、運営するには準備やノウハウが必要でなかなか大変です。その課題の中には「フリーライダー(ただ乗り)」があります。これはこれまでの大学教育では出てこなかった大きな課題ですが、うまく指導できれば良いキャリア教育となります。

アクティブラーニング」が出てくると「フリーライダー」が大きな問題になるのは、アクティブラーニングではグループワークを導入することが多いからです。経産省が主張する社会人基礎力にもある

チームで働く力」の養成のためですが、残念ながら大学の授業はそれを養成するようにはできていません。(そもそも成績表に「チームワーク力」という項目がありませんし、大学教員もチームワークは苦手そうです。苦笑)

一方、社会では逆で、コミュニケーション力を発揮してチームワークができなければ仕事は進みません。それが如何に求められているか、そして学生のチームワーク力が如何に低下しているかは、多くの企業が採用選考にグループワークやグループディスカッションを導入していることからもわかります。

企業の中にも昔から働かない人は「給料泥棒」などと言われており存在していましたが、以下の理由であまり目くじらを立てられませんでした。

1.体を使う仕事が多かったのでサボると目立ってしまう

2.個人の成果より組織の成果が優先だった

3.個人の業績を測定する意識や手法がなかった

ところがこれらの理由が、ITの進化でPCに向かうようになり、個人の目標管理が設定されるようになり、個人の成果に応じて評価するようになってきたため、周りの人への気遣いがだんだんと忘れられてきたようです。政府が勧めるメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移行していくと、この傾向はますます加速されるでしょう。その結果、企業においてもフリーライダーが注目されてきて、書籍や雑誌にも扱われるようになってきました。

社会を見ていても、こうした周りを気にしない人は増えていますね。電車の中でミュージックプレーヤーでヘッドホンをシャカシャカ鳴らしている人、真剣に化粧している女性、等々。

先日、ある企業採用担当者からもこんな話しを伺いました。経理部長が部下について嘆いていたそうです。仕事もろくにできない社員が事務所でスマホばかりいじっているので注意したところ、次の言葉が返ってきたそうです。

「誰に迷惑をかけているわけじゃないから、いいじゃないですか。」

こんな社会人にしないためにも、アクティブラーニングは真剣に取り組まなければなりませんね。

▼参考文献「フリーライダー あなたの隣のただのり社員」渡部幹(講談社現代新書)

http://www.amazon.co.jp/dp/4062880563