第155号:就職課職員の専門教育

春休みに入り、大学入試もいよいよ大詰めですね。皆さんの大学では順調に応募者が集まっているでしょうか?この不景気で、学生の大学出願数も絞り気味だとか、地方の学生が都心に出てこなくなったとか聞きますが、こういった不景気の時にはジタバタしないで勉学に励むのが一番です。晴耕雨読というやつですね。実は、私も昨年の春に社会人大学院院に入学し、この1年間は勉学に励んできました。就職課の皆さんの中にも大学院で学んでいる方が居られるかと思いますが、就職課(キャリアセンター)も本当に専門性が求められる時代になったと思います。

 

私が入学したのは法政大学大学院の政策創造研究科というコースで、雇用プログラムというのを専攻しています。指導教官は、「社会人基礎力」や「キャリア権」の研究で有名な諏訪康雄教授ですが、なかなかご指導が厳しく日々しごかれております。私は4年制コースという社会人向けの長期履修コースで、2年分の単位を4年間でゆっくり取れば良い社会人向けのコースです。

 

大学職員の方が学ぶ大学院としては、桜美林大学の大学アドミニストレータ専攻を良く伺います。こういったプロの大学職員を養成するコースは日本では少ないようですが、それは大学の人事制度が、日本企業と同様に、定期的ローテーションによるジェネラリスト育成だからなのでしょう。特定の部門のプロ(スペシャリスト)を養成するという発想が弱いのでしょうね。実際、私も数多くの大学就職課にお伺い致しますが、2~3年で新しい方に変わることが多いです。

 

しかし、大学就職課(キャリアセンター)の仕事は、近年、ますます広範囲かつ高度になってきていると思います。就職指導期間も10年前とは比べものにならないほど長期間です。しかも、最近は卒業後の相談まで行うところもあり、ますます就職課職員の仕事は難しくなり、高い専門性が求められてきていることでしょう。ところが、大学職員の勉強会は数多く開催されておりますが、なかなか体系だった専門教育を受けられるところは少ないようです。大学生に良い就職誌支援を行うためには、まず良い職員を育成する教育機関が増えて欲しいものですが。

 

また、大学院で得るものは「専門性」の他に、情報交換できる「人的ネットワーク」があります。これは企業人事担当者でも同じなのですが、日々の仕事における外部の相談相手が居るというのは心強いものです。これがあれば、自分の実力の何倍もの仕事ができることもありますし、苦労話を分かち合える「同期」を得られるのは素晴らしい仕事の楽しみにもなりますね。どうぞ皆様も機会があれば、学びの場と仲間をお求め下さい。

*参考URL:

▼桜美林大学大学院国大学研究科 大学アドミニストレータ専攻

http://www.obirin.ac.jp/graduateschool/300/312.html

▼法政大学大学院政策創造研究科

http://chiikizukuri.gr.jp/main2.html

▼上智大学コミュニティ・カレッジ「大学教育とキャリア支援~FD・SDのための基礎知識~」

http://www.sophia.ac.jp/J/ext.nsf/Content/kyoujitsu0125

⇒この講座では私も一コマ講演致します。新職員の方には良い講座です。

第154号:採用活動に関する大学との共同研究-4

恒例の企業の人事労務管理を研究している大学のゼミ学生と採用活動に関する共同研究を行いました。今年は「リクルーター制度の役割」というテーマです。リクルーターの位置づけや活用方法は企業毎に異なり、またこの制度そのものの実態が見えないので調査には苦労しました。企業の声で面白かったのは、リクルーター制度の運営に重要なのは「社内の協力体制」だということです。ということは、リクルーター制度を導入している企業は、良い社内コミュニケーションを行っている企業かもしれません。

*ここで言うリクルーターとは、人事部以外で採用活動を行う一般社員のことです。

 

リクルーター制度を研究するのに際し苦労したことは、リクルーター活動を行っている企業で調査に応じてくれるところが少ない点です。学生200人を対象に行ったアンケートでは、最もリクルーターの接触が多かったのは金融業界でしたが、訪問調査は殆ど断られてしまいました。そもそも秘匿性の高い採用手法なので、自社のノウハウや訪問先大学を知られたくないという心理があるのでしょうか。

逆に訪問調査やWebアンケートにも快く応じてくれたのは製造業です。こちらは理系採用が中心となりますが、足繁く大学に通うリクルーターの実態がよくわかりました。

 

回答数は少ない(23社)ですが、企業がリクルーター制度の運営で重要だと思っていることは、以下の通りです。(複数回答中、上位回答のみ)

 

1.社内の協力体制   ⇒60%

2.採用担当者の熱意 ⇒47%

3.熱心なOB社員   ⇒39%

4.人事部の統率力   ⇒26%

5.リクルーターの研修      ⇒21%

 

質問の回答選択肢には、リクルーターへの報酬や評価、経営トップの理解等もあったのですが、意外にもこれらはあまり重視されておらず、冒頭に述べた通り、リクルーター制度は人事部と一般社員のボランティア的な活動だということです。「人事部に協力してやろう」「仲間を集めなきゃね」そういった社員が居ないとリクルーター制度は上手く運営できません。

対照的に、今回調査研究に応じて戴けなかった企業はノルマとしてリクルーター制度を運営し、学生何人と会うことを義務づけていることが多いようです。(学生側のアンケート回答から)

 

社員の自発的な行動から、人事部の指令から、どちらもリクルーター制度を動かすエネルギーですが、できれば前者を「正統派リクルーター制度」と呼びたいものです。というのは、そういった採用活動は社員の愛社精神の醸成や社員教育という意味もあり、日本企業の特異とする長期的信頼関係の構築そのものですし、そういった企業で若者が育って欲しいと思うからです。