第49号:4年生の就職活動リターンマッチ

3年生向けのガイダンスが盛んに行われる毎日ですが、とある就職サークルから4年生の就職活動への支援依頼があり、お手伝いしてきました。就職活動リターンマッチと銘打たれたこの企画は、まだまだ頑張っている就活学生向けのものでしたが、リターンマッチというよりは準備不足で初戦もまだ十分にこなしていない方が多かったです。適切な相談相手や指導者をもっていない学生ほど、就職活動に出遅れたり固定した自分の価値観から抜け出せないようです。

この企画ではまず参加学生の方々の自己分析と面接方法の再考を行い、最後は模擬面接まで行いました。最近はコンピテンシー面接のような実体験を求める面接が多いので、自己分析によるアピールポイントと実体験とが論理的に整合しているかがポイントです。この基本的な点が意外とできておらず、面接者として聞いた時にアピールポイントがはっきりしていない方が多々見受けられました。

今回参加された学生は、大きく3つのタイプに大きく分けられると思います。

1.内定ホルダー

既に内定を持っておりますが、内定企業に納得できていない、または業界を変えて再検討中の学生です。こういった方は、自分の本当にやりたいことを再考するキャリアカウンセリング的な対応をすると、新たな道が見えたり迷いが無くなってきます。

2.スロー・スターター

事情はいろいろありますが、本当に4月から就職活動を始める学生って居るんですね。面接という非日常的な空間に戸惑ってしまい、緊張感から実力を発揮できないようです。自己分析の会話ではしっかりしているのですが、模擬面接になると驚くほど話せません。個人差はありますが練習を積んで少し慣れればよくなります。

3.唯我独尊者

一見、自分の確固たるスタイルをもっているように見えますが、他人からの評価を聞く耳を持っていません。人に評価される恐怖心をもっていたり、面接での自己アピールはどこか自分を脚色しているようで自分にウソをついている感覚に襲われるようです。頭の良い学生に見受けられますが、信頼関係のできた年長の指導者に当たる必要があります。

さてこの時期の採用担当者側の視点ですが、シーズン前と違って多くの企業ではそれぞれで今シーズンの採用選考基準を固めており、内定ラインを設定しています。つまり、この時期の採用担当者は目が肥えてきているのです。ですから「この時期にまだ採用活動をしている企業なんだから・・・」と甘く見て臨むとあっさりと門前払いになります。一方で、この時期に就職活動を行っている学生さんの多くは疲れ気味です。この企画に最後に参加者にお伝えしたのは、「失敗にへこたれず、それを次につなげる積極性です。」ということでした。この時期に一番、必要なのはやはりこれにつきますね。それは元気の無い学生さんの中でこそ光るものですから。

第48号:低学年のキャリア教育について

いよいよ3年生向けの就職ガイダンスがあちらこちらで始まってきている中で、チラホラ見かけるのが1~2年生を対象とした低学年向けのキャリア教育です。若年労働者の就業問題は、今では年金問題を出すまでもなく国家的課題になりつつあり、早期に若者の就労意識を高めていくべきだ、との声も聞きますが、その方法論はまだ模索中というところが多いでしょう。いろいろなアプローチがあると思いますが、その基本中の基本は「モデリング(観察学習)」、やはり自分の理想とするモデルを見つけることからはじまるのではないかと思います。

この時期に開催される低学年向けのキャリア・ガイダンスは、就職課の方が多忙なせいか、就職情報企業や学生サークルにアイデアから実行まで委託しているところが多いようです。いくつかのガイダンスを見学いたしましたが、どうも参加者数はいまひとつのようです。ガイダンスの内容はよくできていて、参加した学生の関心も高いようですが、やはり課題は動員数を如何にあげるかという点で、大学によってはガイダンスから講義に昇格させて強制的に聴講させているところもあります。いましばらくは主催者にとっての模索の時期が続きそうですね。

低学年向けのキャリア・ガイダンスでは、「なりたい自分をみつけよう」とか「やりたいことを見つけよう」というスローガンを良く伺います。初心に返ってこの言葉を考えたとき、私の頭にいつも浮かぶのは、「坂本龍馬」「野口英世」「豊田佐吉」「ファーブル」「シュリーマン」等々の偉人達です。初学生の頃に図書館で読みあさった偉人の伝記は今でも鮮烈な記憶に残り、いつか自分はこんな研究者・発明者になるんだ、というイメージをもったものです。これはまさにキャリア開発でいうところの、「モデリング」です。遠い世代・世界の偉大な人物なので直接に薫陶を受けることはできませんが、大きな夢を描くには十分なモチベーションになりました。

最近の子供達はどんな偉人伝を読むのだろうと、知人に聞いたところ、最近は多くの伝記が廃版になっていると聞き残念でしたが、NHKのプロジェクトXを見て感動する若者が最近多いと聞きます。これもモデリングなのでしょう。

低学年のキャリア・ガイダンスで何をやるべきか?今の雇用情勢を伝えたり、身に付けなければならないスキルを教え、足元をしっかり固めることも必要でしょう。しかし、一番大事なのは若者が高い空を見上げる意志と希望を持たせることではないかと思います。自分よりも高いところにモデルを見つけた若者は、きっと自ら努力もするでしょうし、敬語も自然に使うようになるでしょう。モデリングとはタテの人間関係を知ることに他なりません。低学年のキャリア・ガイダンスの大きなヒントがここにあるような気がします。