先月、日本経済新聞の一面を飾った記事に、就職活動(採用選考)における大学成績の扱い方がありました。12月の就職活動が本格的になる時期にタイムリーな報道(広報?)だと思って静観注視してきましたが、扱われ方が落ち着いてきたようです。
本件のニュースタイトルを並べてみると面白いです。
「就活、激変! 成績を問う企業が続出する理由」東洋経済オンライン(11月)
「採用、再び成績重視 三菱商事や富士通など15社」日経新聞(12月)
「採用基準が迷走する理由とは?」ハフィントンポスト(1月)
「オールAでも不満? 成績重視する企業のホンネ」日経新聞(1月)
ご興味有る方は、各ニュースタイトルを検索してみて下さい。昨年末は、多くの企業が採用選考に大学成績を重視することになったと盛り上がっておりましたが、年をこえてみると、ちょっと待てそうでもないぞ、となり、最近はやはり(日本では)大学成績だけではないだろう、という流れがみえます。
私も身近な企業採用担当者数十人に尋ねてみましたが、殆どの企業は「大学成績は見るけど特別扱いはしない」との回答でした。これは前々回にお伝えした「採用活動に関する大学との共同研究-7」と同じことです(文系採用に限ります)。採用担当者は、学業は軽視していませんが、学生も自ら話さないし、特段、質問していませんでした。
しかし一方で、採用活動を知らない一般社会人の方(これは就活学生とその親御さんの受け止め方と同じでしょう)に尋ねてみると、「大学成績が見直されるんだって?今の学生は大変だね」との認知でした。大手企業15社が、某社の大学成績情報を採用しただけで、これだけのインパクトを与えるとは、流石に日経新聞の一面です。
大学成績を企業が重視するのはどういうことなのか?この大きなテーマの良し悪しは、この短いコラムでは語りきれませんが、近づける努力は必要なことでしょう。その際に大切なことは、企業が大学の授業を評価する(知ろうとする)だけではなく、大学も企業の求める能力を知り、大学の知見をもって解き明かそうとする努力です。
よく人事部が言う抽象的な「求める人材像」の明確化などではありません。人事の向こうにある働く現場の課題に、大学の力で取り組もうとすることです。今、多くの大学が取り組んでいるPBLは、その有効な手段になって欲しいですし、それが採用活動(就職活動)につながれば良いと思います。
ビジネスコンテストなどをやる場合でも、学生の単なる思いつき発表会ではなく、仮説をたてて、実地見学・統計調査・質問調査・サンプル作成・試行等を行って検証した「企画」にすることで、そのベースになる「統計学」「心理学」「経営学」「経済学」等の有効性を学生に教えることができます。それが学習意欲の向上につながり、大学成績の向上につながり、最終的に企業に納得させられたら良いですね。このような大学と企業の関係性の中に、大学成績のあり方が見えてくるのではと思います。