第371号:静かに進む19卒の内定獲得

3月も後半になり、学内での企業説明会も一段落してきました。私のお付き合いのある大学では今期の説明会には学生の集まりが良くないと聞きます。就職情報産業主催の企業合同説明会でも学生の出足はいま一つだと聞きます。一方で、既に皆さんの手元には学生の内々定連絡も入っていることでしょう。昨年の秋から続いていたインターンシップ経由の内々定が着実に成果を出してきているようです。

前回のコラムでお伝えしたように、私の教え子や就職相談に来ていた学生からは、3月初旬から内々定の連絡が続々届いています。そうした子達はほぼ例外なく秋のインターンシップに通った企業からの結果連絡です。いわゆる勝ち組の学生達は確実に囲い込まれて結果を手にしているようです。そのため、メディアで報じられている「動かない学生」は、本当に何もしていなかい学生と、既に結果を得ているので無理に手を広げず余裕をもって動いている学生が混在しています。

というわけで、19卒の就職活動は目に見えないところで分散化しており、解禁日から一気に動くというパターンにはならなかったのでしょう。これまで製造業は経団連指針に沿って比較的真面目に動いていましたが、この春は経団連加盟の大手企業からも内々定を得る学生で出てきました。先日、経団連会長が採用ルールの見直しを示唆したのも、さもありなんです。

さて、こうした動きの背景で、私の授業を履修登録していた学生が残念な事態になりました。先日、卒業要件不足で留年が決まってしまったとのこと。本人から泣きの連絡がありましたが、どうしようもありません。この学生は、秋頃からインターンシップや就職活動に走り回り、授業に途中から出てこなくなり、出席日数不足・期末試験放棄になったのです。何度かイエローカードを出していたのですが、最後は音信不通になり、履修未達になりました。

また同様に、企業インターンシップに出席して出席日数が不足していた学生がおりました。この学生は私の警告に対してすぐに反応し、補習活動(追加レポートや補講受講等)によってなんとか単位は出せましたが、内容は私も本人も不本意なものになりました。ちゃんと授業に来ていれば良い成績を取れたはずが、残念です。なんでも、この学生はインターシップの成績が良かったので、社長のハワイの別荘に優秀学生と一緒に招待されてプレゼンテーションをしてきたそうです。まったくバブル期の囲い込みの再来ですね。

現状、採用ルールがなし崩しになってきたいま、企業側にも授業期間中のインターンシップで成績不振になった場合には、大学中退でも採用する、入社時期の延長(卒業単位が出るまでは期間契約社員で採用する)等の責任はとって貰いたいものです。必要なら教員から「インターンシップ参加による単位未履修証明書」を出しても良いです。いま留年が決まって泣いている学生も少なくないと思いますが、入社直前の内定取消で欠員が発生するのは採用担当者にとっても大問題なのですから。

▼参考URL:

・大学ジャーナル「2021年度入社の採用活動、経団連会長が見直しを示唆」2018/03/12

http://univ-journal.jp/19707/

第370号:大学と企業のリテンション活動

大学入試もほぼ終了し、変わって採用活動が始まりましたね。私の方にも既に教え子から「内々定を貰いました!」「就活終わりました!」という吉報が届いています。大学入試であれ、企業採用選考であれ、少子化の現代は合格を出せば終了ではなく、ちゃんと入社・入学して貰うためのリテンション合格辞退防止策)が重要です。

先日、大学構内で見知らぬ親子連れと雑談になりました。不安げに大学を見回りながら歩いていたのでお声がけしたのですが、いくつかの大学受験に合格し、何処に入学するか迷い、改めて各大学の入試広報部署を訪ねて相談に回っていたそうです。

ところが、何処の大学も職員が上手く説明できないし、知りたいデータもなく、途方に暮れていたそうです。大学はもっとリテンションに力を入れないといけませんね。合格した学生に、ちゃんと他大学(少なくともライバル校)との違いを把握して説明したいものです。旧来のローテーション人事を続けている大学ではそうした専門性を高めるのは難しいのでしょうけど。

私はいつもオープンキャンパスで保護者や高校生に、大学とは何か、学部の違い、校風・創立の歴史の違いについて話しているので、この親子の不安点に回答していたら、次から次へと質問が出てきて、結局、授業1回分の時間が過ぎました。(これは高校で行うべきキャリア教育かもしれませんね。)

結論は自分で出すものですが、不安そうだった高校生から笑顔が出てきました。意思決定のヒントを得たようで「先生の授業で再会できたら嬉しいです。」と言ってくれ、「他大学に行っても、どうぞ我が校に遊びに来て下さい。」と伝えて見送りました。これは教員としての言葉でもあり、大学OBとしての言葉でもあります。

さて、世間では就活シーズンが活発になってきました。企業でも、自社のことをちゃんと説明できる採用担当者はどれだけいるのでしょう?学生相手に話すには、自社の歴史・理念・現経営者の方針等、幅広い知識わかりやすい説明力が必要です。更に自社だけではなく、他社との比較の上で独自性・優位性をのべなければいけません。しかし、人事しか経験のない人は現場をあまり知りませんし、転職経験がない人は自社の強み弱みを意外と知らないことが多いです。

仕事柄、企業の採用説明を数多く聴いていますが、世間知らずの学生相手に「知ったかぶり」採用担当者が多いと感じることもあります。学生に志望動機を求める時は、「何故我が社だ?」と死ぬほど問うのに、自分が問われたら応えられるのでしょうか?

大学職員も企業採用担当者も勉強し続けなければいけませんね。自大学・自社のことを知るのはとても楽しいものですし、自分の大学・会社・町・国・世界を知れば自慢もできます。愛校・愛社精神を最初から持っている人など殆どいません。しかも、人は「知らない」と「向かない」を混同しがちです。

知識があれば感性が変わり行動が変わり、人生が変わります。そうした「縁つなぎ」は大学入試広報・企業採用担当者の大事な役割だと思います。