第80号:クリスマス商戦と就職商戦

今年も最後の配信となりました。街を歩けばクリスマスの飾り付けが綺麗です。景気が上向いてきたせいか、この年末はクリスマス商戦も盛り上がっているようです。先日、都心のターミナル駅のある繁華街に買い物に行ったのですが、ふと気づくと大勢のリクルート・スーツの学生たちが。どうやら近くのホールで企業の合同就職説明会があったようです。どうもクリスマスは就職商戦の時期にもなってきたようです。

大きな交差点で信号が青になった途端、クリスマスの華やかな色彩の中に何やら無彩色のリクルート・スーツの大集団が渡ってきます。手に肩にしているのは某有名企業の広告が入った紙袋。一見して就職説明会の帰りとわかります。それもかなり大規模なものだったようで、リクルート・スーツの人並みは途切れることなく延々と続いています。ふと気づいたのは、その学生達に向かって走り寄る同じリクルート・スーツの数人の学生たち。気になって観察していると、何やらアンケートらしきものをとって、それから何かを宣伝しています。まるで怪しいキャッチ・セールスのようです。

何だかクリスマス気分が滅入ってきたのですが、気を取り直してお目当てのデパートに入りました。そこですぐに目に入ってしまったのはリクルート・スーツのセールです。勿論、スーツだけではなく、靴、カバン等の就活7つ道具までしっかり揃っています。化粧品売り場では就職面接向けのメーキャップ指導。驚いたことに、最近は男性向けもあるんですねえ。とある大学で面接官を印象づけるメーキャップという男子学生向けのイベントを発見した時もたまげましたが、今の就職活動は本当にお金がかかりそうです。

企業の採用戦略は、ふつう商用(一般広報)から採用(求人広報)に向かうものでした。まずは企業の認知度を高めて企業のファンを増やし、そこから求人集団を形成するという流れです。どうもそれが最近は逆になっている企業もあるようです。採用広報で大集団を形成した後、その集団に自社製品を買って貰うという流れです。そもそも採用広報で形成する集団の大多数は選抜されてご縁がなくなるわけですが、それでは勿体ないとの企業の商魂が動いているようです。つまり、採用から商用へという逆流がおきているようですね。

企業にとっては自社のものを買って貰わなくても良いんです。今回の繁華街での就職イベントのとおり、自社の広告の入った紙袋を大勢の学生が持って歩いてくれたら十分な(一般)広報になりますからね。学生はいつの間にか歩く広告塔にされているわけですが、これは新聞などよりはるかに安価な広告活動です。

どうやら今の日本には巨大な就職産業という業界が形成されたようです。就職シーズンの長期化がそれを急成長させているようですね。せめてクリスマスには学生も大学も採用担当者も休息しましょう。戦争だってクリスマス休戦があるじゃあないですか。

来年も皆様のご活躍をお祈りしております。良い年をお迎え下さい。