第393号:学生のコミュニケーション力のタイプと採点基準

私立大学入試が終盤に向かう裏で、期末試験の採点も終わりつつあります。まさに採点中の答案の最後に「半年間、お世話になりました!」というお礼のコメントを発見して、ほっこりしながら採点しています。授業では殆ど質問も発言もしない学生が、こうしたことを書いてくることがあり、人のコミュニケーション力のタイプの違いに気付かせられます。

採点しながら改めて気付かされましたが、同じ大学でも最近はこうしたコメントが減ってきました。最近の学生は設問だけにすごく真面目に回答してくるのです。私の授業の進め方は変わりませんので、変わってきたのは学生の方なのでしょう。バイトに就活に勉強に多忙で、余裕が少なくなってきたのかもしれません。

面白いもので、大学間で比べると高偏差値の大学ほどこうしたコメントは少なくなります。無駄なことはしない真面目な学生が多いのでしょう。私もお礼を書かれたからと言って甘く見ることはありませんが、こうしたことを書いてくる学生は答案もできていることが多いです。注意したいのは、そうした学生は心の中では情熱があり、ただ表現する経験が少ない、コミュニケーションのスタイルが違うという点です。だから理性的で無関心な学生に見えてしまうのです。就活で誤解されやすいタイプです。

さて、最近の私の関心事は大学成績の採点基準を如何に企業の採用選考基準に近づけるかです。最近は、このコミュニケーションのスタイルの違いを以下の項目に分類して成績評価の幅を広げています。

1.リアルタイム・コミュニケーション力(会話&文書別)

  採点方法⇒授業中の発言とリアクションペーパー

2.オフタイム・コミュニケーション力

  採点方法⇒レポート

3.リアル&オフタイム・チームコミュニケーション力

  採点方法⇒PBL型授業での発揮度

4.リアルタイム応用力

  採点方法⇒期末筆記試験

なので、期末試験を欠席した学生が、よく「救済措置でレポートを・・・」と言いますがが、この視点ではレポートで同じ能力を代替してみることはできず、再試験を行うことになります。

 こうして評価した4項目別の成績を今学期の学生にフィードバックしてみたところ、各項目のトップの者が違うので、学生もコミュニケーション力のスタイルの違いに気付きました。授業での発言回数が多いだけがコミュニケーション力の発揮ではないことを知って喜んだのは、内気だけれど文章力のある学生です。

これまでのように「優・良・可・不可」の成績では何がどう評価されたか学生にはわかりませんし、企業も参考にしづらいですが、このように分類した成績で企業にフィードバックすることにより、大学成績が企業にも再評価されればと良いと思います。

第392号:信頼できる経営者と学生の共通点

秋学期の授業で金融機関の執行役員さんに学生との質疑応答をお願いしましたが、融資判断する目線が熟練の採用担当者と同じで興味深かったです。人事部で採用担当者の経験がなくても、営業等で人を見る目をもっている現場の方は多いです。役員面接などでも、シンプルな質問で人物を見極める人の判断力は勉強になります(その逆に、困った役員もいましたが)。

信頼できる経営者とは、事業が厳しい理由を環境のせいにせず、業界・市場動向をしっかり分析して方策を考える人だとのこと。論理性楽観性と持っているということなのでしょう。その逆に、会社の業績が良くない理由を、景気や社員のせいにする経営者はあまり信頼できないそうです。

就活で多くの企業から内定を貰う学生の共通点も同じです。環境のせいにして他責的な人物は、ポテンシャルは高そうでも採用できませんし、仕事についても屁理屈を言って行動しない社員になりがちです。以前、高偏差値の大学生を採用して痛い目にあったことがありました。環境が思い通りにいかなくてストレスになるのは誰にでもあることです。しかし、それを口に出しても自分が嫌になるだけだし、周りの人も嫌になりますね。

自分の軸ばかり探していて、社会の軸に気付かない人物も視野が狭いと感じるので採用したくはありません。20歳そこそこで固まってしまった自分を客観視社会軸視)できない人は採用リスクが高いです。これは「ヤリタイコト重視症候群」の学生に多いです。自分の信念をもつことはわるいことではありませんが、自分自身の判断や考えが最善だと思い込んで周囲の環境を受け入れない人は困るのです。人は生まれ変われませんが、変わってはいけます。それが若者の最大の魅力なのですから、

私は大学院時代にHBS(Hosei ではなくHarvard Biz. School )帰りの先生に「経営学では自分でどうすることのできないものを”環境”と呼ぶ」と習いました。そして大事なのは、それを前提としてどうするのか?とのこと。ちなみに、この先生は奥さんとうまくいかない点に悩んでいたそうですが「女房は俺の環境だったのだ!」と気付いたら楽になったそうです。

採用担当者には応募者の深い性格や本心は見えませんが、言動からそれを察することはできますし、お客さんの前に出せる人か出せない人か、という判断はできます。多くの採用担当者は融資判断はしませんが、投資判断をしています。それも短時間の面接という限定的な情報で。ちゃんと研究して確率を高めないと、投資より投機か博打になってしまいます。

 ちなみにこうした環境対応に強いのが体育会の学生達で、良い経営者には体育会出身者が多いです。アスリートが経営者に向いている理由を、体育会出身者を採用して経営者に育て上げた経営者の講演を 法政大学の体育会本部と連携して企画しましたので、ご関心ある方はどうぞおこし下さい。時節柄、ご多忙だと思いますが、学生指導のヒントになると思います。

▼参考URL:
2月18日(月)「挑戦におけるリーダーシップとは~アスリートが経営に向いている理由~」

https://goo.gl/forms/QlEtQiNuPNCymgcl1