第17号:海外留学生と地方学生

年に何度か海外で日本人留学生向けのジョブ・フェア(合同説明会)があります。この2月にもサンフランシスコでジョブ・フェアが開催され、視察して参りましたが、参加企業は最盛期の半分くらいになっています。いろいろな理由から企業の留学生採用については転換期になっており、なかなか留学生にとっては厳しい環境になってきました。同じ現象が日本の地方学生も起ころうとしています。

留学生採用に企業が力を入れていたのは、IT景気の盛んな5年程前の頃でしょう。IT関連のハード・ソフトの製造業やコンサルティング企業、日本に進出した外資系企業(日本法人向け採用)、金融機関等、多くの企業が海外のジョブ・フェアに出かけていました。ところがITバブル崩壊後の不況の深刻化により、多くの企業が海外での採用活動を縮小しており、今では全米トップ10に入るMBAでさえ、卒業時の内定率は70%程度になっています。

更に最近、特に留学生が不利だと感じるのは、就職活動の環境の差です。日本の学生が3年の後半から就職活動に取り組みはじめ、志望動機を考え、エントリー・シートを書き、面接の準備をする等、急速に就活慣れしてくるのに対して、留学生は周囲の環境がそれほど切迫していないので、なかなかそこまで行動をとらなかったりします。日本の早期化の状況が望ましいということではありませんが、日本の学生で面接慣れしている企業の採用担当者にとっては、留学生のマイペースな対応が、相対的に反応の鈍さや準備不足と映ることがあります。

この状況は、日本の地方の学生と都心の学生とも同じといえると思います。最近、地方の大学に講演に行った採用担当者は首都圏の学生や企業の動向を伝えてきたそうですが、なかなか実感として感じて貰えなかったと言っていました。大都市圏では駅に行けば嫌というほどのリクルート・スタイルの学生を見かけるのですが、地方ではそうもいかないことでしょう。ここ数年、企業の出張予算がだんだんと少なくなり、海外留学生採用と同様に地方まで採用活動に回る企業が少なくなっています。特に今はITで情報が簡単に入手できるため、却ってリアルな状況の変化が感じられなくなっています。地方の学生には一度は都心に出てきて戴き、出遅れる前に刺激を受けて欲しいものです。

第16号:採用担当者もウォーミングアップ中!

そろそろ企業の採用活動はセミナーが始まり、面接を行っているところでてきました。学生さんの多くは、まだまだこの時期は準備が十分ではなく、試行錯誤をしながら自己紹介を考えたり、志望動機を煮詰めたりしているところでしょう。一方の採用担当者も面接のウォーミングアップをしているところです。プロ野球選手と同じく、シーズン前の立ち上がりの時期は調整が必要なのです。

就職シーズンの初期は、企業の採用担当者も面接の勘を取り戻すのにちょっと時間がかかります。そのシーズンの最初の面接ではなかなか緊張するものです。やってくる学生さんもまだまだ面接に慣れておらず、初対面同志のお見合いのようでお互いの会話も要領を得ていません。

毎年の採用選考基準は、その年の応募学生と接していくなかで、だんだんと形成されていき、内定者1号が出るとその人がまず採用のリファレンス・モデルというかひとつの採用基準になります。これを繰り返すことによって、「今年の基準はこのあたりだな。」と選考基準を絞り込んでいきます。まるで新しいピストルを何度か試射して狙いを定めているようなものですね。

意外に思われるかもしれませんが、採用の現場の担当者、人事部長、役員、のそれぞれは同じ基準で学生を見るわけではなく、それぞれの視点で判断しています。そのため、応募者は何回かの面接の中で同じ質問をされることがあります。学生としては同じ回答をして良いものか戸惑うようですが、選考側は異なる基準でみているのですね。

就職シーズンが進み、選考がある程度進んでくると、そのシーズンの応募者のレベルが見えてきます。順調に進めば良いのですが、思ったより合格者が少なかったりすると、選考基準の見直しを考える(基準を緩める)ことを考えるのですが、ここ2年ほどは経済の見通しが不明なので、基準は緩めずに募集期間を継続する企業が増えています。

ちなみに、企業の採用担当者は、応募者の敬語の間違いなどは全く気にしません。面接であがっている学生さんの態度も選考基準とは関係ありませんが、緊張しすぎて話ができないとポイントが稼げません。多くの企業で面接は加点主義ですからね。