第47号:世代別のキャリア開発アプローチ

企業の採用人事は選考と内定者のフォローに神経を尖らす時期になりましたが、大学では早くも3年生を中心とした来シーズンの就職指導が始まってきました。並行して2世代の学生を支援するのは大変な労力ですが、世代や学生のレベルに応じたアプローチを考えたいものです。

先日、3年生に向けた職業ガイダンスで企業の最新採用動向と自己分析についての講演を行いました。「最近の企業の選考基準を考えると、自己分析には無理にやらなくても良い部分もあるので今からあまり肩に力を入れる必要はありませんよ。むしろ行動の方に比重を置いて下さい。」とお伝えしたら、多くの受講者から「なんだか大変なことをやらなくてはいけないと感じていましたが、少し気が楽になりホッとしました。」という感想を戴きました。

この時期には、たまに就職スタッフを対象とした学生の就職指導についての話を求められることもあります。キャリアの開発支援をする場合、1つの手法だけでは指導者側のペースになりがちですから、できればクライエント(学生)の状況に応じて、コンサルティング、コーチング、カウンセリング(前者ほど指導的要素が強い)等のアプローチを使い分けたいものです。指導側レベルや都合にクライエントを合わせるというのは、スキルやテクニックの指導には良いかもしれませんが、心の発達には向きません。

私見ですが、一般のキャリアの開発支援を行う場合には大きく分けて下記の4つの各世代でアプローチを変える必要があると思っています。キャリアカウンセラーもこの全領域をカバーするのは困難でしょうから、今後は自分の得意分野(専門分野)を明確にする必要があるでしょう。

1.家庭~小中学高校生(10代以前)

2.大学生~新社会人(20代)

3.中堅社会人(30代)

4.中高年社会人(40代以降)

大流行になっている「低学年からのキャリア教育」についても、職業意識を早期に持たせたり考えさせたりする機会をつくることは大事ですが、その手法を高学年と同じにやっていては成功しないと思います。その結果、主催者が考えたほど参加者が集まらなかったり、上記の例のように学生にプレッシャーを与えたり、早期にテクニック論に走らせてしまうことになってしまうかもしれません。

先日、中央職業能力開発協会から若年者に会わせたキャリア開発手法およびキャリア・コンサルタントのスキルについて報告書がでました。またキャリアカウンセリングの資格が増えるのかと思うと勉強で頭が痛くなりますが、これもクライエント(学生)にっとっては望ましいことだと思います。

参考資料:若年者向けキャリア・コンサルティング研究会報告書(中央職業能力開発協会)

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/04/h0428-2b.html#top

第46号:新卒の雇用ミスマッチ

就職活動もいよいよ後半戦になりました。大手企業の採用活動は一段落したようですが、中堅企業についてはこれからが本番になるでしょう。この時期になると、学生にとっては就職活動を続けることは精神的にも辛いとですが、大事な頑張りどころですので応援してあげたいものです。同時に、なかなか自分にあった仕事が見つからないと戸惑う学生には、仕事選びの考え方を改めて伝える機会だと思います。

現在の厳しい就職状況をみていると、メディアではいつも「雇用のミスマッチ」という文字を見つけます。求職者の持っている専門性や指向性が、求人企業のそれとズレているということであり、厚生労働省でもこの対策に必死になっております。では新卒採用に「雇用のミスマッチ」というのはあり得るのでしょうか?私見ですが、職業経験の無い新卒学生はあまり気にしなくても良いのではないかと思っています。

人が職業を選択する場合、やりたいことがあってそれに就く場合と、就いてみて経験した後にそれがやりたいことだったと思う場合とがあると思います。この2つのスタイルは、個人によって異なりますが、同様のことを採用面接で質問しています。「貴方は、今の大学・学部を何故選んだのですか?」という問いがそれにあたりますが、その回答で「××先生について学びたいと思ったのです。」「こういった職業に就きたいと思ったからです。」と卒業後にやりたいことを明確に回答する学生は100人に数人居るかどうかです。同様な質問で、高学年になってから「貴方は今のゼミ・研究室を何故選んだのですか?」という質問をすると、その理由を回答できる学生は数十人に増えてきます。つまり、その組織に入って初めて自分のやりたいことが見えてくる、逆に学んだことをどう社会で活かすか、という発想がうまれるわけです。

実際、企業の就職でも同じで、OB体験談で語る社会人のキャリアの体験談で「最初からこんなキャリア・デザインをしていたのです。」と講演される方もおられますが、楽屋で裏話をすると「いや、綿密に計算していたわけではありません。」と本音を話される方が殆どです。最近のメディアの風潮では、自己分析やりたいこと本当の自分、を探させるカウンセラーや就職塾のようなものが多いです。しかし、それは本当に必要なものでしょうか?

雇用のミスマッチ」の最大の問題は、この言葉を流行らせてしまったところにあるのではないかと感じることがあります。この言葉がメディアで声高にいわれているから、「就職活動が厳しいのは私のせいではない、社会のせいだ。」と考える学生を増やしてしまい、結果的に、やりたいことを探し続ける学生、何となくフリーターになってしまう学生を許容しているように思えます。

今から就職活動に頑張る学生に一番必要なのは、どこかのTVCMではないですが、

考えるな、Just Do It!

という言葉ではないかと思います。そうしてぶつかってきた学生に対して、初めてフォローのカウンセリングやコーチングの出番になるのだと思います。