第369号:オリンピック選手から学ぶこと

冬季オリンピックも終盤ですね。純粋に頑張る選手達からは数多くのドラマと感動が伝わってきます。私の教え子にも日本・世界レベルのトップアスリートがおりますが、彼・彼女らの思考・行動パターンは、就活をする学生にも参考になると思います。

私自身も大学時代に運動部のはしくれでしたが、結果を出す強い選手の共通点は、以下の3つです。

1.迷っている時間が短く、行動している時間が長い。

2.自分より強い相手に、負けを恐れず挑戦する。

3.環境を言い訳にせず、対策を考える。

なんといってもトップアスリートが凄いと思わされるのは、意思決定が抜群に早いことです。何かの問題や課題があった時に、すぐに判断して行動を始めます。どんなに厳しい練習だとしても迷わず始めるので、練習時間が長くとれるのです。早く始めれば早く終わるだけでなく、仮に失敗しても修正する時間があります。
就職活動も試行錯誤の連続です。未知の世界を相手に不完全の中で意思決定をしなければなりませんので当然のことですが、失敗を恐れて判断を先送りにする就活生が多いようです。応募書類の提出でも、締め切り日から逆算して書き始めて迷い、中途半端で提出する学生はいませんか?

これは私の知人で日本のトップ経営コンサルタントにも共通しています(ちなみに、この方も学生時代にバドミントンで日本代表になったことがあります)。この方が講演でおっしゃっていました。「どんな人でも持っている時間は同じなので、迷っても良いけれどできるだけ早く決め行動する時間の方を長くするべきです。」言われてみれば当たり前のことなのですが、なかなか難しいことですね。

次に、どんな厳しい試合であっても、勝つことを第一に考える点です。どんなスポーツでも「ここまで頑張ればいいや」とか「あの選手には勝てないな」とは考えません。仮に考えたとしても絶対に口外はしません。以前、ヒットしたTVCMで「自分より強いヤツを倒せ。」というフレーズがありました。
就活生に全部高望みをしろと言う気はありませんが、社会に出ようとする若者には「等身大」などという言葉は使わず、自分の限界まで背伸びして欲しいと思います。自分より強い相手と闘うために勝つ努力をすることが、結果的に自分の力を伸ばすのですから。

最後に、どんな厳しい環境でも、その中でできる最善策を考えることです(今回の冬季オリンピックでは選手生命に関わる問題のある無理な競技運営もありましたが)。不安定な自然を相手にするスポーツ選手と、未知の社会を相手にする就活生は状況が似ています。環境は自分で左右することはできませんが、トップアスリートが負けた時に言い訳にする人は少ないと思います。うまくいかないことがあっても、言い訳をする時間があれば、敗因を考えて次に向けてチャレンジしていますね。

この冬季オリンピックではついに過去最高のメダル獲得数になりました。結果の出なかった種目もありましたが、トップアスリートの最後の頑張りを見て、就活生も不安に負けずに動き出して欲しいものですね。

第368号:入試改革、教育改革から成績評価改革へ

私大の入試が始まり、大学近辺には緊張感が漂う季節となりました。私は兼任講師(非常勤講師)なので入試業務には関わりませんが、入試採点同様、在学生の期末試験採点のヤマ場で緊張感をもって取り組んでいます。採点をしながら思うのは、成績評価はA、B、C、D評価でシンプルだけれど、これで良いのだろうかという点です。特に私のように、企業採用担当者出身でキャリア教育を担当している教員なら、もっと別の評価基準を加えたくなると思います。

2020年度からのセンター試験の改革は紆余曲折しながら進み、それに合わせて授業改革も段々と進められています。キーワードになっている、アクティブラーニング、ナンバリング、キャリア教育等々もシラバス制作等にだいぶリクエストされるようになってきました。そして、最後の卒業認定・学位授与の出口も「厳格化」という方向で進んでいます。文科省の学校教育法施行規則の改正における3つの方針が着実に推し進められているわけですね。

この方針については是非もありませんし、採用担当者としては学校成績の「厳格化」は歓迎ですが、それがA~DのGPAだけではとても満足できません。伝統的な講義型授業の理解達成度ならこれでも十分、参考になりますが、そこで得た深く広い知識や分析力・考察力がどの程度「応用・発揮」できるのかが不明だからです。研究者になるための大学内部評価ならそれでも大学内で仕事のできる人材にはなるでしょう。しかし社会で生き抜くためには(採用担当者の参考になるためには)、そうした知見を実践させる「演習」が必要であり、そこで達成された能力の成績指標が求められます。

演習」については、キャリア教育やインターンシップ(当然、1day等のセミナー系は含みません)やPBLで、これも入試改革同様に紆余曲折しながらもだいぶ研究も実践も進んできました。しかし、これだけ教育に力が入っていながら、最後の成績指標がGPA評価では勿体ないと思います。例えば、社会人基礎力のような3つの指標「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」別に段階評価する等の工夫が欲しいです。これが、冒頭で述べた私が感じている疑問です。

企業の採用選考でも総合評価の採点は、A~D等のランク別になっていますが、その構成要素には、行動力・思考能力・対人能力等の下位指標があります。これらは職種別に異なり、同じAランクでも構成要素が異なることは当然です。営業職と開発職では求められる資質が異なるのですから。

実は私の成績評価も、こうした下位指標を設定してその総合評価としてA~Dランクにしています。しかし、こうした成績記号だけを貰っても学生が自分の能力を理解して改善・強化は困難です。自分の長所と課題が具体的にはわかりませんから。今年度は試しにこれらの指標を学生に個別フィードバックしてみて反応を聴いてみようと思っています。

全ての科目をそこまでフィードバックするのは大学として大変かもしれませんが、少なくともキャリア教育等、演習型の教育ではこうした評価に変わって欲しいと思います。「講義型授業成績」と「演習型授業成績」の二本立てならでも、採用担当者の見る大学の成績評価も大きく変わることでしょう。それとも、これらも英語の入試改革と同様に、外部機関の評価に委ねられることになるのでしょうか。