第139号:二人の新社会人からのメール

この週末、春に就職した二人の新社会人からメールが届きました。 一人は「元気に頑張っています!」、一人は「心が折れそうです・・・」というまったく対照的な内容です。 雇用のミスマッチということが言われますが、改めてこの言葉の意味を考えさせられました。

この二人の状況で興味深いのは、両者とも1~2ヶ月の新入社員研修を経て現場に配属されたのですが、その環境が想像とは異なるものでもあるにかかわらず、反応が正反対なことです。元気に頑張っている方は「現場の方は人間的に素晴らしい方が多く人生の勉強になっている。」と書き、心が折れそうな方は「希望通りの仕事ですが、子会社の方とは気が合わなくて・・・」書いてきています。この違いは何から来るのでしょうか?

一般に就職(雇用)のミスマッチを言うとき、それは労働者のやりたいこと(活かしたい専門性)と使用者の求める能力のズレのことですが、もう少し広く見てみると会社のもつ資産との相性と考えられるでしょう。

ヒト ⇒経営方針、企業文化、社風、配属された職場の人間関係

モノ ⇒勤務地、労働環境(研究設備、生産設備、OA、IT等)、福利厚生施設

カネ ⇒給料、労働時間、社会保険関係、企業研修制度

上記の会社資産の何に対して多くを望むのか、ということが応募者の就職企業選定基準になります。最近の売り手市場の状況で学生が多くを望むのは当然ですね。採用担当者にインタビューすると、今年は福利厚生関係や労働条件(残業時間・ボーナス)について詳しく尋ねてくる学生(内定者)が増加したとか。

さて、この二人の新社会人は、人間関係について相反することを語っています。それぞれの詳細はわかりませんが、社会に出るとこれまでとは異なる人間関係にぶつかり楽しんだり悩んだりすることでしょう。大学と違って同質・同文化・同年齢・同価値基準ではない人々と触れ合うわけですから。

問題はそんな時にどんな対応をとるかです。言い方を変えればミスマッチにぶつかったらどうするか、ということです。そして、ここが今の学生の弱点(課題)だと思います。

どんなに業界研究をやっても、どんなにインターンシップを行っても、人間関係のミスマッチを無くすことは不可能でしょう。最終的に配属される部署(一緒に仕事をするヒト・組織)は入社前に確定はできませんし、会社訪問やインターンシップでの人間関係と、実際に配属されて仕事(ビジネス・利益)が絡んだ人間関係とは異なりますから。

ミスマッチという言葉に慣れてしまうと、ミスマッチ自体が問題であるように思われますが、本当の問題はミスマッチにぶつかったときにどうするかどう支援するか、です。景気がやや怪しくなってきた現在、売り手市場が意外と早く変わるかもしれませんが、そういった環境変化に自分を変えていける人が最後まで生き残るし、企業からも求められるのだと思います。

この二人の新社会人はこれからが本当の勝負です。暖かく応援していきたいものです。

第138号:あと一歩、内定のとれない学生のタイプ

企業での採用選考や大学での就職相談を行っていて、この時期に内定が取れない学生にはちゃんと理由があることがわかります。自己表現(プレゼンテーション)で失敗しているのが共通点ですが、この時期よく見受けられる、あと一歩が足りなくて内定が取れない学生の二つのタイプをご紹介しましょう。

 

  • 自己主張力(発言力)はあるが、他責的で自己のふり返りがないタイプ

アピール力(発言力)はあるのですが、内定が取れない理由が自分の何処にあるか客観的に見て反省する意識が弱く、次々に企業をまわります。強情でなかなか自分の考えや行動を変えようとはしないので、採用担当者からは自己中心的で扱いづらい人物と見られてしまいます。ちょっと意識を変えれば、その強情さは意志の強さになって長所になるのですが、それがなかなかできないのです。

 

2.セールスポイントはあるにも関わらず、プレゼンテーション力不足のタイプ

対人スキル(特に自分を上手に表現するスキル)が弱く、採用担当者に自分をうまく伝えられず、弱い人物と見られてしまいます。誤解されやすいタイプです。以下のようなタイプがあります。

・話す論理構造(結論・理由・事例)はある程度できているが、一般的すぎて印象に残らない。

・話す力はあるが、アガリ症で早口であったりして、話すうちに論理が崩れてしまう。

・話す内容が整理できていないので論理がたっていない。

*プレゼンテーション力不足の多くは、「話し方」の巧拙ではなく、「話す内容」が整理できていなくて自信がもてずにアガルという傾向が強いです。

 

上記の2タイプは、自分の課題に気づけば、比較的早期に選考合格することができますが、意外とできないのが自分の課題に気づくことですね。これは自分自身ではなかなかわかりませんから、就職課の職員の方などが上手に支援してあげる必要があります。(1のタイプは、就職課の言うことも聞かない傾向がありますが。)

 

他に、この時期に内定が無い学生に対して共通に指導すべきコトは、「内定がとれなかった理由」をちゃんと反省(分析)して、現時点の就活や自己理解にどれだけ活かしているかを話せるようにしておくことです。というのは、採用担当者はこの時期にやってきた応募者には必ず就職活動の経緯を質問してきます。そして、この時期に「内定無し」となると、「何が理由だろう?」と根拠を考えます。

 

つまり、春先の失敗経験は反省するかどうかによって、その後の成功につながるか失敗のまま継続するかの大きな分かれ目になるのです。これはとりもなおさず、学生自身の自己理解能力・現状把握力の開発および発揮でもあり、企業の採用担当者が重視するところです。人間、誰でも失敗はしますが、それを認められるかどうかがポイントなのですね。誰でも自分の若さ故の過ちは認めたくないものですが。