第310号:学内選考会でわかる学生の資質

日頃キャリア教育でお世話になっている企業への支援で、今年も学内選考会を開催しました。採用人数がそれほど多くないということで、マスメディアを使わない「ダイレクト・リクルーティング」のお手伝いです。集まった学生の中には私の教え子も居りましたが、日頃授業で身に付いている言動は、良くも悪くも出てくるものですね。

 

夏休みで使い放題の大学の教室に連携大学数校の就職課を通じて募集したところ、意外にも3日間で定員が一杯になってしまいました。1時間程度の企業セミナーを行った後に筆記試験を行い、通過すれば面接に進むという標準的な採用選考プロセスです。通常のWebからのエントリーに比べるとエントリープロセスが少なく選考期間も格段に短いです。応募した学生にアンケートをとってみたところ、大学内なので私服で良くて緊張しなかった等、好評でした(以下参照)。

 

▼学生アンケートから

・セミナーと選考を学内で行うものに初めて参加しました。普段の選考会と異なり、分かりやすく企業について説明して戴けたので良かったです。

・企業セミナーでは一部分を切り取ったビデオは良く見かけますが、仕事の始めから終わりまでどう対処するのかは初めて見ることができ、仕事の流れがわかりました。

・企業セミナーは理念のみを前面に押し出すものが多く、具体的に(その企業の仕事を)理解するのが困難ですが、今回はとてもイメージが持ちやすかったです。

 

私も一緒にセミナーを聴いておりましたが、注意して見ていたのは学生の反応の方です。流石に居眠りをしたり、後ろの席に学生が集まったりすることはありませんでしたが、セミナーを聴いている学生の反応は殆ど授業と同じです。採用担当者の説明に、頷いたり相槌をうったり質問をする学生は自然と印象に残ります。アンケートの書き方も上記のような具体的な例なら良いですが、「今までの説明会の中で一番、充実したものとなりました。」とだけでは何がどう良かったのかわかりません。

 

人間は、日頃から定着しているスタイルをすぐに変えられるわけがありません。ですからセミナーの受講態度を見ていると、学生のコミュニケーションスキル(スタイル)が一目瞭然です。学内選考だとリラックスしている分、企業内よりもっと現れやすいのでしょう。勿論、企業はこうした態度を採用選考に直結させませんが、結果的につながってしまうことが多いのは、採用に無関係のインターンシップに参加した印象の良い学生が記憶に残るのと同じです。

 

というわけで、私の授業では何度も学生に言っています。「私の授業の評価基準は企業のセミナーと同じです。私の話に無反応にならないで下さい。コミュニケーション力とは言動力です。特に非言語コミュニケーションは運動と同じで体を使わないでいると、使わないでいる方が身に付いてしまい動かそうと思っても動けなくなりますよ。」結果、昨年はこの学内セミナーから見事に教え子が内定しました。今年も吉報が届くことを楽しみにしています。

 

第309号:知らぬが仏も良いことも

残暑お見舞い申し上げます。早いものでお盆休みとなりました。このメールをご覧になるのがお休み明けという方も多いでしょう。今年の夏は、安保関連、原発再稼働、戦後70年、記録的猛暑等々、例年にはない大きなニュースがたくさん流れています。そのせいか、この8月1日からの就活解禁は、あまり世間で大きな話題にならなかった気が致します。ちょっと嬉しいような寂しいような気分です。

 

少し前までは、イスラム国、ギリシャ経済破綻が大きな話題でした。これらの問題は決着がついたわけではありませんが、ニュースにならなくなると私たちの意識から遠ざかり、あたかも片付いたかのような錯覚に陥ります。これだけの記録的な猛暑が続いたなら、水不足や電力問題だって大きな問題になっているはずですが、どうなっているのでしょう。

 

こういう話題を引き出してみたのは、世の中には知らなければ幸せだということもある、と言いたかったのです。自然環境破壊などの本当の大問題が人知れずに進行するというものと違って、人間社会における経済・社会活動では知らなければ何の不安も問題もなく過ごせるものがあり、大学生の就職活動や企業の採用活動は、そんな性格もあるのではないかと思います。

 

例えば、パワハラ面接・オワハラ問題についても何処まで実態の把握は本当に困難ですし、対策もたてようがありません。私自身が出会った無数の企業採用担当者の方々も、それは何処でやっているの?と思っています。特定の地域・業界・時期では頻繁におこっているのかもしれませんが、そうした局所的な事実がニュース報道されると一気に世間全体がそうであるかのように拡散、多くの学生を不安に陥れます。

 

そうしたブラック話題ではなく、もう少し身近なホワイト話題だと、友人の内定情報も同様です。早期に内定を貰った優秀な学生は、周りの就活仲間にはなかなか言えませんね。話すことよって友達が焦ったり、距離ができたり、場合によっては僻まれたり。内定を持っていない学生も、そうした情報を仲の良い友人から聴くと自分の面接に気負いすぎて悲壮感が出て失敗することもあります。

 

マスコミが社会の問題を取り上げて報道する使命はわかりますが、今年のように粛々と進んでいく状態は、あながちわるいものではないと思います。逆に、何処の会社がこんな良い採用活動をしている、こんな良い会社が若者を求めている、という報道を期待したいものですね。

 

さて、手前味噌で恐縮ですが、今春から毎月行っている法政大学でのビデオ教材研究会ですが、この夏休みは集中勉強会として、企業人事担当者と学生とこうした時代のキャリア教育や大学と企業と学生のあり方も討論してみたいと思っています。ご関心あるかたは、是非熱い話をいたしましょう。

 

▼8月27・28日 企業人事・学生とのビデオ教材研究会(法政大学)

http://3dep.hosei.ac.jp/event/details/2015/07/27/id4107