第208号:facebookの脅威

前回、ソーシャルメディアについて書きましたが、特にfacebookの活用について大丈夫ですか?というお問い合わせがありましたので、少し注意点を述べておきたいと思います。前回は逆説的に「学生に積極的に使わせましょう!」と書きましたが、反面、facebookには非常に怖い面もあります。

 

facebookは、ソーシャルメディアという名のとおり、昔のアマチュア無線に近いものです。携帯電話やインターネット以前の時代に私も楽しんでおりましたが、アマチュア無線は免許取得者の個人個人が自前の放送局という存在で、公共電波に広く発信するものです。そのため、常に誰かが聴いているという意識を持ちながら会話する心構えが必要でした。

 

facebookがアマチュア無線とまったく異なるところは、自分の発信したメッセージや友達情報がネット上に公開され記録される点です。わかりやすく言えば、携帯電話の着信・発信履歴と電話帳を他者に公開しているようなものです。

これはデフォルト(最初に登録したままの状態)で使用し始めた場合で、プライバシーの設定を行うことで、公開情報の内容や公開先を制限することができます。しかしながら、日本でfacebookが爆発的に普及している現在、こうしたことを気付かずにいる方が相当に多いのではないかと思います。

怖いのは、気付いた後では手遅れになることです。周知の通り、個人情報は一度ネット上に公開されると殆ど取り返しがききません。自分のfacebookやブログから削除したとしても、既に他者に広がった記憶や評価というのは残ったままです。

 

というわけで、就職活動中の学生がfacebookを使う際には、以下のような点を注意喚起しておくべきだと思います。(これは企業のビジネスマナー研修でも必要になってきた常識です。)

 

・最初のうちは、個人情報の公開は限定的にすること。(mixiと同じ感覚で使わないこと。)

⇒個人が特定されやすい(ストーカーには最高のツールです)。

・facebookのビジネスツールとしての性格をしっかり理解する。

⇒自然と人脈が広がって公開される(業者の顧客開拓・宣伝には最高のツールです)。

・特に友達の受け入れ、友達情報の公開には慎重に。

⇒自分の友達情報の公開は、友達にも迷惑がかかる面がある(携帯電話を無くした怖さ)。

 

facebookの怖い性格は、退会の手続きをとる際に垣間見えます。以前よりは改善されましたが、まずは退会方法がわかりにくく一度入ったらなかなか抜けられません。それでも退会手続きをとろうすると、(言葉は丁寧ですが)かなり脅迫めいたメッセージが出てきます。

最後に、採用担当者の視点でfacebookの機能を見ていてすぐに連想されるのは、かつての興信所の役割です。いまでは少なくなりましたが、以前、大手企業では内定した学生の身元調査が行われておりました。facebookでは流石に個人債務の状態まではわかりませんが、興信所にとっての前段階調査ではfacebookは最高のツールです。

原子力と同じく、最新技術は魅力的に見えるものが多いですが、それを使う人間の意識や能力がついていかないと怖いものとなりかねません。

第207号:ソー活とリア就

「ソー活」という言葉は、そろそろ皆さんも耳にも届き始めた頃だと思います。いま流行のソーシャルメディアであるtwitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)等を利用した就職活動のことですね。今年は「ソー活元年」といわれておりますが、これまでのITツールと何が違うかを理解するのはなかなか難しいです。いずれこのコラムで何度か触れて参りますが、少し俯瞰してみましょう。

 

そもそも「ソーシャルメディア」という言葉の意味もよくわからないという方も多いでしょう。たしかに、IT業界に身を置いてきた私でさえ最新の動向についていくのはなかなか大変です。同じソーシャルメディアであるtwitter とFacebookでも使い方や機能はかなり違います。Twitterでは匿名にして何でも気楽につぶやけますが、 Facebookは実名で使われるのが基本なので自ずと発言には自制心が求められます。

双方の共通点といえば、そうした情報発信・交流の中で自然とネットワークが広がっていくように設計されている点です。そのため、こうしたツールを使いこなす「ソー活学生」と、そうでない学生ではますます大きな情報格差が発生してくると思われます。周知のとおり、昨秋からリクナビとタイアップしたFacebookの「コネクションサーチ」という機能では、OB/OG訪問のアポも取れるようになってきますので、もしかすると大学就職課の卒業生紹介という仕事も減るかもしれません。

 

一方でここ数年大手企業は、ネット経由の「ソー活学生」よりもリクルーターを使った直接の対話による採用活動に力を入れてきました。学生にとっては「ソー活」とは対称的なリアルな就職活動、つまり「リア就」(学生の俗語である「リア充」、ネット上の仮想社会ではなく現実生活が充実している人のことから思いついた私の造語です。)の学生の方が有利だったわけですね。この傾向は今後も続くでしょう。しかし、ソーシャルメディアの流行により、このリア就の学生も影響を受けて変わってくるかもしれません。

というのは、実名で学歴や趣味等がわかるFacebookは、それだけで「ネット上のリア就」という性格をもっているからです。企業のリクルーターは、これまで卒業生名簿や出身研究室・サークルというリアルな人的ネットワークから学生に接触を計ってきました。その手間暇が、Facebookによりかなり効率が良くなるからです。以前より「逆求人」という企画がありましたが、自分に自信のある学生は、積極的にソーシャルメディア上に自分の個人情報を公開し、リクルーターの目に止まるようにするでしょう。つまりソーシャルメディアはWeb上に公開された履歴書やESの役割をもつのです。こうした情報発信ができない学生は、逆にどんどん埋もれていくかもしれません。

 

最後にこのメディアは上手く使えば良い学生指導の機会になることを指摘しておきたいと思います。ソーシャルメディアは公開されたメディア、つまり公共の場なので、学生がネット上で無礼な振る舞いをすると丸見えになります。機能上、見せないようにも設定できますが、どんどん公開させて、若者にスマートな公共精神を身に付けさせるのです。「採用担当者の目に止まるような発言・書き込みをやりなさい!」「ネット上に誇れるような大学生活を過ごそうよ!」「そんな失礼な発言は採用担当者が見ているよ!」私は最近、学生にそうしたセミナーを行い始めましたが、是非、新しいメディアを新しい視点で活用したいものですね。