「忖度」と「AI」は、今年の流行語の東西横綱になるかもしれませんね。AIが発展すると「なくなる職業」というのもマスコミを賑わしましたが、果たして採用担当者の仕事はAIによってどのような影響を受けるのでしょう?
採用活動は、大きく分けて大規模母集団形成型(不採用活動)とスカウト型(ダイレクトリクルーティング)がありますが、まずAIが活用しやすいのは前者です。マスメディアを活用して形成した集団を選考活動で絞り込んでいくのは膨大な金銭&時間コストを伴います。特に初期段階での絞り込みは労働集約的作業ですから絶大な効果を出せるでしょう。
先日、ソフトバンク社がAIをエントリーシートの評価に活用するというニュースが出てきました。このように単純な正解/不正解の判断ではなく、経験値と能力との複雑な相関関係を把握する作業はまさにAIの強みが発揮できる分野です。勿論、最初は精度が低いかもしれませんが、こうしたデータを積み重ねることによって確実に進化するのがAIです。大学入試改革でも小論文の採点にAIの導入が検討されているのと同じですね。
一方のダイレクトリクルーティングでAIがどのように活用できるかは少し難しいですが、何処の柳の下に行けば二匹目のドジョウが居るかの確率を高めることに使えます。自社の求める人材がどんな大学・学部・ゼミに所属してどんな授業を履修しているのか、どんな部活・サークル・コミュニティに属しているのか、どんなバイト・ボランティア・イベントを経験しているのかを探し出すことです。
この場合では先述のケースと異なり、母集団形成過程において入手できる応募者情報ではなく、社外に存在しているビッグデータが必要になります。AIはどんなに優秀でも処理すべきデータがなければ無力です。そのため、今後はビッグデータを持っている思わぬ産業が就職情報産業に絡んでくる可能性があります。例えば、JRやJTB等は膨大な旅行者情報をもっておりますが、そのデータを活用して市場調査サービスを提供しているように。
採用担当者にとって有り難いのは、大学側がそうしたデータや情報を提供してくれることです。どの授業やゼミや教員がハードで良い学生を育ててくれるのか、そうした学生はどんな企業に就職していくのか、もしこうした情報が提供されるなら、学生と社会の出会いにも可能性が広がるように思います。そしてそれは、大学の教育力向上にも資するFD活動にもなるのではないでしょうか。
AIは人間の仕事を奪うものとして恐れる方もおりますが、そうした新技術を使いこなす視点を持ち続ければ、個人も社会も相互に発展可能でしょう。そうしないと、AIの方がドンドン進化して、いつか本当に人間の方が消えてしまうかもしれません。相互に進化していけば、AIは人間のことを忖度してくれるようになってくれると思います。
▼参考URL:「ソフトバンク、新卒採用にAIを活用 ESの評価を補助」(日経新聞)