4月の選考解禁直前となり、採用担当者の方も選考準備に追われています。企業の方から面接のトレーニングの依頼を受けるのもこの時期です。採用担当者は人を見るプロですが、初めて面接を担当する時には誰でも緊張するものです。
学生と違って、面接を担当する採用担当者は「初めてなので緊張していますが、一所懸命に頑張りますので宜しくお願い致します。」と言うわけにもいきません。模擬面接を行ったり、本番の面接を見学したりして、経験値を上げていきます。そうした面接者の役割は、大きく以下の3点が挙げられます。
1.広報機能 ⇒ 応募学生に安心感を与え、話しやすくする
2.判定機能 ⇒ 面接から応募者の能力を測り、適性を見極める
3.説得機能 ⇒ 判定後、有望と思われる学生に自社をPRする
面接を行う採用担当者は、どんな応募者がやってこようとも、丁寧公平に対処しなければなりません。学生は面接者の印象を、その企業のイメージとしてそのまま捉える傾向にありますから。判定不合格と感じても、ここで不遜な対応をとったりすると、クレーマーになってしまうこともあります。
また、面接の質問によって、学生のクチコミが広がるようなことを意識することもあります。例えば、常に語学力を問う質問をすると、学生間には「あの企業は英語ができないとダメだよ」という認知が広がり、英語の強い学生が集まり、弱い学生が避ける、ということになります。
次に、前回お伝えした「会話力」から応募者の仕事能力を測り、どの部署で働けるか、将来どんな人材になりそうかを想像し、合否を判定します。つまり合否判定とは、採用担当者が応募者のキャリアプランをイメージできるかどうかです。学生が自分のやりたい仕事を熱心に説明しても、言葉通りに受け取るのではなく、採用担当者は何処に配属できてどんな成果を出しそうかを考えています。
そして、配属イメージが浮かび有望だと感じたら、「こんな仕事に関心ありますか?」とか「貴方はこんな仕事に向いてそうですね」と打診します。学生が素直にその仕事に好奇心を示せば良いのですが、そうでない場合は、その仕事の魅力を説明して説得します。この点、営業出身の採用担当者は上手です。(この手法は、集団面接ではやりにくいですが。)
こうしたプロセスを採用担当者も模擬面接で練習し、判定結果のバラツキを確認します。どんなにトレーニングを行っても、人の判定機能は厳密には一致しませんので、面接者の基準を完全に統一しようとするのではなく、面接者各自の判定のクセや考え方を話し合って理解するのです。その価値基準の交換によって、面接者達は質問内容や判定能力を向上させることができます。(質問内容を工夫して、面接者のバラツキをなくすコンピテンシー面接という手法もありますが。)
別の言い方をすると、採用担当者は「求める人材像(選考基準)」にマッチした若者を求めるというよりは、「求める人材像」になりそうな若者を模索するのです。つまり、採用担当者の面接トレーニングとは、想像力のトレーニングと言えるかもしれませんね。