第271号:使い回しコピーは指導のチャンス

冬期休暇が終わり、大学も期末試験の時期になりました。コピーマシンの前には学生が行列をなし、友人のノートをコピーしまくっています。試験前の風物詩といえる後景ですが、授業のレポートでも「使い回し」を行う学生がたまにおります。きっとそうした学生は、企業のエントリーシートでも行っているのでしょうが、成績評価でも採用選考でも、あまり良い結果は出ないでしょう。

 

私のシラバスでは、15回の授業のうち3回欠席すると成績評価対象外になります。健康上の理由、アルバイト、就職活動だろうが、区別はしていません。しかし欠席した事情によっては、1回分だけレポートでの穴埋めを許すことにしています。(3回の欠席の場合、レポートを出せば2回欠席の扱いで評価対象になります。)

レポートのテーマは、以下の中から選ばせることが多いです。

1.欠席した理由(および欠席した日に考えたこと)

2.私のキャンパスライフとキャリア

3.自由テーマ

 

採点基準は、授業で説明しているアカデミックスキル(論理的記述)で書かれているかと、内容が授業とどのように関連づけられているかですが、上記のテーマを出した場合、期末試験等の繁忙な時期ですと、3の自由テーマを選ぶ学生が増えてきます。学生は「自由テーマ」なら何を書いても良いだろうと安易に思い、上記の採点基準をつい忘れてしまうのでしょう。結果、書き直し(不合格)になるケースも多いです。

つい先日も、締切日ギリギリに提出されたレポートで、全く私の授業とは関係のない内容のものがありました。当初は提出先を間違えたのかと思いましたが、学生に確認してみると「自由テーマだから何でも良いと思った。それで単位を貰ったこともある。」とのこと。しかし、私は受理せず再提出を求めました。レポートの使い回しは認められませんから。

 

こんな時、学生に助け船を出すことがあります。同じレポートをそのまま出すのではなく、そのレポートをデータ(材料)と扱って、私の授業や自分自身の能力開発(キャリア)につなげる書き方をする、つまり分析と考察を書き加えることです。これは、就職活動で、自分の体験してきた事実(データ)をどのように分析(自己PR)や、考察(結論⇒その企業への志望動機)につなげるのと同じことです。1つの体験から多くの知見を考え出すことです。

 

すべての授業でこのようなやり方が通じるとは思いませんが、少なくとも私の考えるキャリア教育では有効かつ社会でも通じます。それは大学での学びを社会や就活で活かせるようになるということで、「自由テーマに」はまった「使い回しコピー」の学生は絶好の指導チャンスです。

 

逆に応募者が山のように来る採用選考では、絶好の不合格ポイントです。就活のエントリーシートで、「ああ、これは何処の会社にも使えるワンパターンだな。締切日ギリギリにとりあえず出してしまったんだな。」などと思われるようなものを書かせてはいけません。「自由」は難しいけど、ちゃんと理解して、やり甲斐があるものとして取り組める若者に育てなければいけませんね。

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