第249号:登録を促す就職ナビサイト

「今年は母集団形成が異常に順調なんだよね。」つい先日、馴染みの採用担当者から伺った言葉です。かつての理工系推薦制度のような大学との強力なパイプがあったり、人材紹介業等のアウトソーシング等を使わない限り、採用担当者にとって自社へのエントリー数(母集団形成)は重要な問題です。ところが今年は、いくつかの同規模企業の採用担当者から同じような話を伺います。さて、これは正直に喜んで良いものなのでしょうか・・・?

 

この話を伺った企業は経団連には加盟しておりませんので、倫理憲章にはこだわらずに既に採用面接を始めています。企業規模はそれなりに大きさですが、あまり知名度が高い方ではないので、例年、母集団形成に苦労されています。ところが今年は、Webエントリー数、そこからセミナーにやってくる確率、更にセミナーから採用選考面接に進む学生が殆ど辞退なくやってくるそうなのです。

 

少し気になったので、就職活動中の学生に尋ねてみたら、面白いことを言っておりました。「最近の就職ナビサイトは、企業への登録数が少ないと『あなたはエントリー数が他の人より少ないのでもっとエントリーすべきです。』というメッセージが出るんですよね。プレッシャーをかけられてるようで、気分わるいです。」

*ちなみにこのシステムは、新卒だけではなく転職(中途委作用)のナビでも使われています。

 

なるほどですね。こんなメッセージを毎日見せられたら、自分のペースをしっかり持てる学生ならば気にせず無視できるのでしょうが、気弱な学生は焦っていくつもエントリーすることでしょう。実際、私の教えている女子大学の真面目な学生も慌ててエントリーしまくっています。この現象の背景にあるのは、就職情報企業に対して厳しく募集段数を求める企業採用担当者のニーズです。これは就職ナビサイトだけではなく、最近なかなか学生が集まらない合同企業セミナーでも同様です。せっかく費用をかけて出展したのに、肝心の学生来場数が少なくなって主催者は苦労しています。

 

就職ナビサイトが広報ツールとして登場してもう20年近く経ちました。初期の頃の広報ツールから母集団形成ツールとなり、今はマッチングの機能まで備えてきています。もはや就職ナビサイト無しに企業が採用活動をすることは難しいです。その反面、物心ついた時からITの恩恵を受けている若者には、もはや就職ナビサイトも特別な存在ではなくなり、こうした後押しやてこ入れがないと動かなくなってきたのかもしれません。mixiにfacebookにLineと、さすがに全部は使い切れていませんからね。

 

さて、母集団形成が今のところ順調だというこの採用担当者の方は、続けてこんな話しをしてくれました。最後にそのままお伝えしましょう。

「正直、早く開始して確かに良い学生は集まりやすいけど、逆に全く慣れていない学生も多く、きっともう少し練られれば良い物を持ってそうなのにと感じるケースも多々あります。おそらく今後は早目に内定出しても、結局他社に逃げられるケースが続出し、結局グダグダ続けるはめになるんじゃないかと思ってはいます・・・。」

この採用担当者の懸念が当たらなければ良いのですが。

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