第77号:社員紹介採用と入試広報活動

企業の採用方法にはいろいろな手法があります。外資系企業においてはポピュラーで、最近は日本企業でもたまに見かけるのが「社員紹介採用」です。縁故採用の一種ですが採用部署が公募するので従業員は誰でも利用できます。これは社員のクチコミを採用広報に利用するものですが、大学の入試広報でも応用できるかもしれません。

日本企業の縁故採用というと、紹介してくるのはお偉いさんが多いので、採用選考の現場にあれやこれやと口を出すことが多いのですが、外資系企業では縁故紹介という習慣がないので、採用担当者は精神衛生上、とても楽です。そもそも外資系では現場のマネージャーが採用権限を持っていることが多く、彼ら自身が人事部長のようなものですから、人事部に紹介するというのは入社手続き作業にすぎません。

この「社員紹介採用」は、中途採用で一般に用いられており、公募に知人を紹介して、その人物が採用選考をパスして入社したら一定額の報奨金が出るのがふつうです。報奨金は紹介したポジションによって異なることが多いのですが、トップレベルの経営コンサル業界では100万円を超えるようなこともあります。こういった報奨金が出ることもあって、紹介者は採用選考に口を挟むことはできず、また仮に不採用だった場合もクレームをつけてくることはまずありません(この点、外資系は本当に楽です)。

ただし社員紹介採用は、やり方によっては日本の職業安定法に抵触することがあるので(人材紹介は国の許可が必要)、報奨金の支払い方法等については気を遣います。一般社員を即席ヘッドハンターにするようなものですからね。それでも人材紹介業を使うより、はるかに安価で良い応募者が集まることが多いのです。

さて、大学入試広報担当の方と話をしたときに、大学広報では在学生のクチコミによる受験生への紹介が一番効果があると聞いたことがあります。クチコミによる広報はバイラル・マーケティングと呼ばれますが、ネット上での個人間のネットワークでも応用されています。バイラル(viral)というのは「ウイルスによって起こる」という意味で、伝染病のように伝播する効果を表します。少子化のこれから、どこかのカード会社ではありませんが、紹介した新入生が入学したら、紹介してくれた学生に報償金(奨学金適用等)を払うというのは効果があるかもしれませんね。

社員紹介採用が成功するキーは、社員が自分が属する会社を他人に紹介したくなるような状態であること。つまり社員がその会社を好きであるということです。同様に、在学生が自分の大学を好きであることがクチコミ広報が成功するキーとなるでしょう。学生への報奨金は非現実の域としても、企業も

大学もまずは社員・学生に対する精神的報酬を用意することが第一歩ですね。

コメントを残す