第48号:低学年のキャリア教育について

いよいよ3年生向けの就職ガイダンスがあちらこちらで始まってきている中で、チラホラ見かけるのが1~2年生を対象とした低学年向けのキャリア教育です。若年労働者の就業問題は、今では年金問題を出すまでもなく国家的課題になりつつあり、早期に若者の就労意識を高めていくべきだ、との声も聞きますが、その方法論はまだ模索中というところが多いでしょう。いろいろなアプローチがあると思いますが、その基本中の基本は「モデリング(観察学習)」、やはり自分の理想とするモデルを見つけることからはじまるのではないかと思います。

この時期に開催される低学年向けのキャリア・ガイダンスは、就職課の方が多忙なせいか、就職情報企業や学生サークルにアイデアから実行まで委託しているところが多いようです。いくつかのガイダンスを見学いたしましたが、どうも参加者数はいまひとつのようです。ガイダンスの内容はよくできていて、参加した学生の関心も高いようですが、やはり課題は動員数を如何にあげるかという点で、大学によってはガイダンスから講義に昇格させて強制的に聴講させているところもあります。いましばらくは主催者にとっての模索の時期が続きそうですね。

低学年向けのキャリア・ガイダンスでは、「なりたい自分をみつけよう」とか「やりたいことを見つけよう」というスローガンを良く伺います。初心に返ってこの言葉を考えたとき、私の頭にいつも浮かぶのは、「坂本龍馬」「野口英世」「豊田佐吉」「ファーブル」「シュリーマン」等々の偉人達です。初学生の頃に図書館で読みあさった偉人の伝記は今でも鮮烈な記憶に残り、いつか自分はこんな研究者・発明者になるんだ、というイメージをもったものです。これはまさにキャリア開発でいうところの、「モデリング」です。遠い世代・世界の偉大な人物なので直接に薫陶を受けることはできませんが、大きな夢を描くには十分なモチベーションになりました。

最近の子供達はどんな偉人伝を読むのだろうと、知人に聞いたところ、最近は多くの伝記が廃版になっていると聞き残念でしたが、NHKのプロジェクトXを見て感動する若者が最近多いと聞きます。これもモデリングなのでしょう。

低学年のキャリア・ガイダンスで何をやるべきか?今の雇用情勢を伝えたり、身に付けなければならないスキルを教え、足元をしっかり固めることも必要でしょう。しかし、一番大事なのは若者が高い空を見上げる意志と希望を持たせることではないかと思います。自分よりも高いところにモデルを見つけた若者は、きっと自ら努力もするでしょうし、敬語も自然に使うようになるでしょう。モデリングとはタテの人間関係を知ることに他なりません。低学年のキャリア・ガイダンスの大きなヒントがここにあるような気がします。

 

 

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