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第357号:オープンキャンパスで感じる校風と求められる人材

前回に続いてオープンキャンパスについて書きたいと思います。いくつかの大学を回って学生と話してみると各校の校風が見えて勉強になります。教職員の方の説明会や模擬授業にも参加してみましたが、やはり説明には大きな違いがあると感じました。それは大学が大事にしている「教養」の差なのかもしれません。

 

大学では学生の引率するキャンパスツアーにも参加してみました。どちらの大学も30~40分の行程でキャンパスの施設や歴史を解説してくれますが、この説明の仕方に違いがあって面白かったです。

 

ある高偏差値大学でのツアーでは、担当学生が理路整然に時間通りきっちり説明してくれましたが、この説明の仕方が教員の説明とよく似ていたのです。ちょっと残念だったのは、これも教員と似ていましたが、質疑応答などの参加者とコミュニケーションが殆どなかったことです。大学予備校の夏期講習ではありませんが、知識を一方的に詰め込まれた印象です。

 

それとは真逆だったのが中偏差値大学で、こちらの学生はツアーの最中にクイズを入れたり自分の体験を話したり、来客を楽しませるところを重視しているようでした。その大学で別の学生のツアーも横目で見たり、この大学教員の説明も聴いてみたりしましたが、同様に個性を前面に出しているように感じました。

 

面白いもので、その大学の教職員や学生は気づいていませんが、知らぬ間に校風が組織メンバーの言動に現れているのですね。これは企業の社風でも同じことが言えます。だから就職セミナーで学生が最近、よく質問する「御社の社風は?」はなかなか答えにくいものなのです。

 

さて、上記の二大学について、どちらが就職しやすいかというのは難しいです。専門性(知識)を重視するか、人間性(相性)を重視するか、最近の人事戦略用語でいえば、ジョブ型雇用かメンバーシップ型雇用か。両方あるにこしたことはありませんが、就職実績を比較してみると、それぞれを重視する分野に進んでいるように思えます。

 

こうしてみると、オープンキャンパスから見えてくるものは、大学の雰囲気だけではなく、社会に排出する人材タイプもあるのでしょう。それはきっと企業採用担当者にも有用な情報です。

 

実は今シーズン、知り合いの企業人事部長から「実は私の子供が来年、大学受験なのでオープンキャンパスに行ってみたいのですが・・・」という相談がありましたので、法政大学で案内しました。日頃、厳しく人を見る目から親御さんの優しい目になり、昔はなかったオープンキャンパスの場で子供のように目を輝かせておられましたが、学生の説明を聴き終わった途端、「君、良かったらうちに来ない?」と人事部長の目に戻ってダイレクトリクルーティングしていました。

 

こんな風にオープンキャンパスは、企業採用担当者への良い広報の場にもなれるかもしれませんね。

 

第356号:オープンキャンパスと1DAYインターンシップ

暑中お見舞い申し上げます。日本列島各地では台風災害に猛暑と大変ですね。

さて、企業ではインターンシップが、大学ではオープンキャンパスが花盛りです。これらは良く似ていて、どちらも来場者を如何に引きつけるかに工夫&苦労しています。私も毎年、保護者向けにキャリア教育のセミナーを行っているのですが、内容を考えていると採用担当者の気分がよみがえります。

 

オープンキャンパスと似ているのは、インターンシップでも1DAYのもので、本来のインターンシップとは異なりますが、オープンキャンパスの模擬授業のように短時間の仕事経験を設定したり、在校生が高校生と話すように社員との対談やディスカッションを行ったり、教員が講義をするように社員が講演をしたりします。その際に、私が心掛けていたことは以下の3点です。

 

1.良いこと(自慢話)だけを話さない

2.来場者とコミュニケーション(質疑応答)をする

3.他社の動向もみて自社のオリジナリティをしっかり考える

 

採用広報では、優秀な人材ほどうますぎる話にはのらず慎重です。なので、高偏差値の大学生にはあえて仕事の大変なところを話します。これは大学が高偏差値の高校生をターゲットにするのと同じです。

ちなみに人事採用担当者は総務広報担当者とそりが合わないこともあります。採用担当者はRJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)を伝えたいのでトラブルも貴重な経験と考えますが、広報担当者は企業の全般的なイメージ向上を考えますので、ネガティブな表現にはうるさいです。

 

来場者の入社意欲を高めるためには、イベントへの参画意識をそそることです。経営ゲームのようなグループワークを行ったり、セミナーでも必ず質疑応答(コミュニケーション)を取り入れたりします。質問が出ない場合でもそのままにせず、好奇心をひく問いかけをしながら質問や関心を引き出します。志望動機とは、来場者だけが作るものではありません。喚起して一緒に作り出すものです。

 

最後に、採用担当者は意外と他社のことを知りません。大学の合同説明会等でご一緒しないと、自社のアピールポイントだと思っていたことが、どの企業でも当たり前だということに気づけないのです。同様に、最近は大学生がオープンキャンパスに参加して大活躍していますが、彼らは意外と自大学の強みや弱みを知りません。企画担当の学生には改めて他大学のオープンキャンパス偵察を勧めたいです。

 

ところで企業では、オープンキャンパスのように組織全体をあげての大規模な広報活動はできません。しかし、これから人材の獲得は益々大変になりますし政府が一億総活躍社会を標榜するのなら、「オープンカンパニーの日」という祝日を作ったら良いかもしれません。社員の家族を会社に招待してパーティー等を行う企業もありますが、そうした中にオープンに大学生も入れてあげれば良いのです。大学生は社会人との交流に飢えていますし、社会人もまた若者との触れ合いを楽しめるはずです。こうした機会が多くあれば、学生の仕事へのミスマッチも減り、好奇心と行動力も高まるのではと思います。

大学と企業、似た課題を抱えているのですから、良い協力関係ができると良いですね。