第398号:5月病から自己成長シンドロームへ

10連休が丸ごとあった大学は少ないと思いますが、これだけ長期の休みがあると、学生も教員も4月から持ち上げてきた授業のペースがリセットされてしまいますね。かつての5月病になってしまいそうです。さて就活で必死の学生のエントリーシートの採点や模擬面接をしていると「自己成長シンドローム」という症状が大流行しているようです。

学生の志望動機を聴いていると「御社であれば、自分を成長させることができると感じたからです!」というものが多くありませんか?

勿論、成長意欲をもつことは良いですが、基本的能力として、自分の話す内容が相手にどう伝わるかを意識していない応募者は子供っぽくて(私の場合は)採用できません。学生も単純に待遇や環境を求めているのではなく、向上心をアピールしているのでしょう。しかし、社会はインプットではなくアウトプットで評価される世界です。こうした人は入社して現実に直面すると、すぐ折れるタイプになりそうです。もっとも、他に良い能力があれば拾います。心構え等は就職してから育まれるものも多いので。

視点を大学教育に変えると、大学では教えたことを社会で活かして成果を出すことの評価はできませんから、学生はアウトプット相手ファースト)が大事と気付かず、自分ファーストになるのかもしれません。「向学心」があることは学生の基本中の基本ですしね。なので、大学教育をフィードバック重視のアウトカム評価に変えれば改善されると思いますが、それは非常に面倒で手間暇もかかることです。教員もそれがわかっているので、そもそも論(社会は大学を分かっていない)と宣います。

それで、いつも志望動機を突っ込んで「就活は初めての自分個人で行うビジネス(交渉)で、自分の思いだけでは通用しないよ。」と諭します。学生によって、ハッと気付いたり泣きそうになったりしますが、夢や想いや笑顔(どれも今の学生が大好きな言葉です)を理想から現実にしていくのが働くということですので、こんなことで挫折するくらいなら最初から無理です。採用担当者の社会的役割には、社会の壁というものがあると思います。その能力がないうちは、外に出すわけにいきません。

翻ってみると、学生の受講している業者の就活セミナーは、こうした現実に向き合わせることを先送りにしているようです。学生の背景にあるのは、相変わらずの「まずは自己分析」型指導のキャリアセンター主催の就活コンサルの存在です。日常生活でも最近の素人集団歌唱隊のような「自分らしさ」「素人っぽさ」をウリにした流行の影響もあるのでは、と思います。しかし、学生は「自分らしさ」を主張したがるのに、独りで主張することはやりたがりません。個性を重視して欲しいと言いながら、みんなが一緒に活動する新卒一括採用に無思考に流されている楽さを享受しています。

早く「自己成長シンドローム」から抜け出して「我が社に入って何をやりたいの?それは何故我が社でやりたいの?」この採用担当者が最も知りたい質問に答えて欲しいものです。