第384号:採用ルール廃止についての学生討議

10月10日の朝刊の一面には「経団連の採用ルール廃止」が並びました。たまたまその日の3年生の授業はプレゼンテーションとグループディスカッションの演習だったので、これをテーマにしてみましたが、学生の視点はなかなか冷静でした。

授業ではまず個人で賛成か反対かの立場を決めて論拠をまとめ、1分間の個人プレゼンテーションを行い、その後に同じ立場のグループに分かれて討議をしてからグループ別の発表を行いました。集計の結果と理由は以下の通りです。奇しくも大手就職情報企業の学生調査アンケート結果(採用ルールは必要が約70%)と似たものになりました。

ルールの廃止には、反対(62.5%)賛成(37.5%)

▼反対理由
・学生の(勉強への)モチベーションが低下する
・(早期化により)企業側に辞退者が増加する
・新たなミスマッチが発生する
⇒早く決まっても、就活は続けるので学生の意識が変わる
⇒早く決まると勉強せず遊ぶので、伸びるはずの学生が低迷する

▼賛成理由
・学生が主体性を獲得できる機会になる
・多忙になるので時間管理力が向上する
・上記の結果としてミスマッチが減る

▼条件付き賛成意見
⇒大学が学生の学習環境等を守ってくれるなら賛成

論拠の知見やデータの不足は否めないものの、思い込みや感情に偏った意見ではなく冷静に分析しており、授業の狙い(ロジカルシンキング&プレゼンテーション)は達成できました。結果として授業前にこのニュース報道に不安がっていた学生も少し安心できたようです。

最後のまとめで学生に教えたのは、アリストテレスの「実践知」です。法政大学の看板でもありますが、実践知とは単に仕事ができるだけではなく、社会の課題解決のための知見(教養)をもち、それを正しい方向に進めるためのモラルvirtue美徳)をもつことです。経済的なメリット・デメリットだけではなく、それが人類を幸福にするか、社会を良い方向に導くか、を判断して行動できるかです。

経営学者で世界的権威の野中郁次郎一橋大学名誉教授も、この重要性を経営者に説いていますので、経団連を初めとする経営者諸氏にはルールがなくともモラルで活動できるところを見せて欲しいです。

参考URL

▼速報:就活日程ルール撤廃による企業・学生の影響は?:ディスコ
https://www.disc.co.jp/press_release/6434/

▼就活を「自由化・通年化」しても、うまくいかないこれだけの理由:日経Biz Gate
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXZZO3578154026092018000000?channel=DF040620184168