第376号:日大アメフト事件を面接で問われたら

6月に入り、選考解禁日が過ぎて1週間ほど経ちましたが、私の教え子からも内々定の報告が入り始めました。中でも一番早く報告とお礼に来たのは運動部の学生でした。前回触れた日大アメフト部の事件の影響で、運動部や日大に対する採用担当者の印象悪化を報じるメディアもありますが、多くの採用担当者はあまり意に介していないと思います。仮に問われてもピンチはチャンスにできます。

私の授業の成績評価は厳しいですが、運動部の活動にはできるだけ配慮して試合等で欠席する場合には課題を出す等の対応をしています。そのため、文武両道の学生が受講しています。この報告に来た運動部学生は一部リーグの強豪チームを率いていますが、私が授業を終えて教室で後片付けをしているところに飛び込んできて、某人気企業に決まったことを伝えてくれました。報告後の雑談の中で、今回の事件について面接で何か問われたかと尋ねましたが、どちらの企業でも話題になったことはなかったそうです。

このように良識ある採用担当者は、この時期にこうしたテーマを扱うことには慎重でしょうが、スポットで面接を依頼された人事部以外の一般社員が面接官になった場合は、デリカシーなく好奇心で尋ねることもあると思います。学生は圧迫質問と感じるかもしれませんが、その場合は超然と対応するのが一番で、焦ったり、むきに持論を熱く展開したりするのは禁物です。

これは面接やプレゼンテーションにおいて難しい質問をされた場合の対応と同じで、感情ではなく論理で回答するロジカルシンキングの発揮チャンスです。私は授業や就職セミナーで、米国著名人の以下の名言を引用しながらこうした質問への対応方法を教えています。

Great minds discuss ideas;  ⇒思想を問う(社会・文化背景)

Average minds discuss events;      ⇒事件を問う(出来事の原因)

Small minds discuss people. ⇒人間を問う(当事者の責任)

この格言はマクロとミクロの視点を提供していますが、客観的に俯瞰して持論(仮説)を展開していけば、採用担当者の評価も上がると思います。また、ここから更に進めるならば、自ら学んでいる学部の知見と組み合わせればオリジナリティ(個性)も評価されることでしょう。例えば、経営学部なら組織論やブランディング論に引き付けられますし、文学部ならコミュニケーション論にもっていけるでしょうし、法学部なら第三者評価について論じられます。

今回の事件は、運動部の中でもトップレベルの超上位校の出来事で、運動部の中でもほんの一握りの世界の話しです。ですが、こうした危機を新たな学びの機会にしたり、より高次な視点で見るチカラの発揮の場にすることは大学運動部員全員に教えたいことですね。そういう運動部員なら、どんな企業でも喜んで迎えてくれることでしょう。