第316号:経済三団体の発言の違い

倫理憲章を巡る論争は決着がついたようですが、この問題についての経済三団体(日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会)トップの発言を聞いていると、それぞれ個性があって面白いです。意外とこの三団体についてご存知ない方が多いので、整理しておきましょう。

日本経済団体連合会経団連)は大企業中心の約1400社からなる団体(一般社団法人)で、その代表者(榊原定征氏:東レ会長)の発言は財界の代表として政治に大きな影響力を発揮します。労働問題についても議論して倫理憲章を定めていますが、歴代代表者はあまり新卒採用については詳しくなく、事務局の用意した内容を発表するだけにとどまっているようです。そのため記者会見で突っ込まれると、ポロッと感情的な発言をすることがあります。倫理憲章を設定している団体ながら全体の調整的な見解が多く、最近は確固たる信念や方針がないままに右往左往しているようです。(きっと他のもっと重要な案件で大変なのでしょう。)

日本商工会議所日商)は約125万社の中小企業からなる団体(特別民間法人)で、全国に514箇所の拠点を構えています。代表者(三村明夫氏:新日鉄住金相談役名誉会長)は大企業の方ですが会員の殆どである中小企業の意見を述べています。法律に基づいてできた団体であるため社会福祉のための公的な性格の活動です。今回の倫理憲章の6月への前倒しを経団連に泣きつくような形で提言しました。しかし、倫理憲章は学生のために作られたはずなので、こうした企業の便益を図るために変更するというのはちょっと変ですよね。

経済同友会は戦後すぐに出来た経営者同士の勉強会がルーツで、企業経営者約1300人が個人の資格で参加する団体(公益社団法人)です。先進的な経営を目指した提言をしており、経団連や日商とは違って、代表者(小林喜光氏:三菱ケミカルホールディングス会長)個人の考えを元に歯に衣着せずに話すので説得力があって面白いです。先日も倫理憲章についての見解を述べられましたが(下記URL参照)、理想は世界の常識である「通年採用」であり新卒一括採用からの移行を提言しています。

さて、これら経済三団体のそれぞれの意見の中で傾聴すべきは、やはり経済同友会のものではないかと思います。というのは経団連と日商は最終的なあるべき姿が描かれていないからです。倫理憲章で時期の問題だけを論じるのはその時々の社会背景や特定の団体の利益に左右されてしまいます。そうではなく、段階的でも良いから理想を描いて目指すべきです。

こうした理想(あるべき姿)を描く場合、やはり総合商社で世界を見てきたビジネスパーソンの見識が役立ちます(下記URL参照)。太平洋戦争開戦前夜、世界の情勢を良く見ていて開戦絶対反対を主張したのもかつての商社マンたちでした。しっかり世界を見据えて倫理憲章を論じるべきですね。

▼小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨(2015.11.12)経済同友会

http://www.doyukai.or.jp/chairmansmsg/pressconf/2015/151112a.html

▼国際大学学長(槍田松瑩氏:元三井物産会長)の倫理憲章についてのコメント

http://college.nikkei.co.jp/article/47141710.html

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