第200号:就職活動維新&採用活動ルネサンス

日本貿易会、日本製薬工業会、日本経団連、経済同友会、日本商工会議所、そして国立大学協会と日本私立大学団体連合会、企業の採用活動の時期の見直しについて見解が出てきましたが、まだしばらくは議論も続きそうです。それぞれの団体にはそれぞれの事情がありますが、この中で明らかに意見が異質なのは日本経団連(以下、経団連)です。採用担当者の視点、特に選考基準の視点で見てみましょう。

 

もし、この7団体の代表者を採用面接した場合に私が不採用にするのは、やはり経団連の代表1名です。それは当社の選考基準で見てリーダーとしての資質に疑問があるからです。その資質とはただ1つ、自ら意志決定する哲学をもっているかどうかです。責任ある大組織のトップは、メンバーの意見に耳を傾けることは必須ですが、大多数意見をそのまま結論にするようなら存在意義はありません。大学生のグループ・ディスカッション選考で、司会役をかって出る学生がメンバーの多数決を取ることがリーダーの意志決定と勘違いしているようなものです。(勿論、リーダーの資質にはいろいろあります。)

 

それは「学生の意向を反映しているのなら、十分考慮しないといけない。」というご発言からも察せられます。企業採用活動の状況や社会の趨勢の理解はおろか、自分のことさえまだ分析中の学生の意見を求めるというのはリーダーの役割の責任転嫁であり、そもそも多様化している学生の意向がひとつにまとまるとお考えなのでしょうか。何処の大学のどの学生の意向を伺うのでしょうか。

 

私は、4年の4月からの広報開始、8月からの選考開始、10月から正式内定、多くの団体が提唱しているこのスケジュールを支持します。「冬休みをうまく活用してほしい」などとは大学教育の視点からも言語道断です。冬休みは期間が短い上に期末試験を控えた学生が秋の講義を復習する重要な時期です。仮に学生が企業訪問を行いたくても、肝心の企業が年末年始の行事で休んでいます。(採用担当者をこれ以上、働かせないで下さい。)ついでに言えば、内定している4年生に対しても資格試験を圧迫するような特定業界の社員教育早期化も止めて欲しいです。期末試験と卒論まとめの時期にどれだけ学生が苦悩していることか。

 

私は今こそ企業採用担当者が採用活動の原点に返って、現在のやり方を見直すべき時だと思います。私が初めて営業から人事の仕事に異動して採用担当者になった時、驚いたのは業界全体がなんでこうも画一した採用活動を無思考にやっているのかということです。しかも、採用担当者がそれに気付いていません。個性的で独創的な人材を採りたいならば、個性的で独創的な手法が必要です。面接という選考手法は大量採用には向いていますが、人材のほんの1面しか見ることが出来ません。くり返し面接を行っている採用担当者はそのことを忘れてしまったのでしょう。

 

先日、慶應大学のセンター試験撤退と武田薬品の応募資格がTOEIC750以上というニュースがありました。私がこのニュースに触れたとき、これは就職活動維新、採用活動ルネサンスのはじまりだとその英断に感心しました。これまでの大多数に群れるやり方に疑問を持ち、孤高であっても自組織の哲学に基づいて踏み出す。それが変革期(維新期)に必要なことです。これをガラパゴス化と笑う者がいるでしょうか?果たしてどちらがガラパゴスでしょうか?進化の機会を失いたくないものです。

コメントを残す