第186号:内々定者フォローの多様化

企業の採用選考活動も粛々と進んで参りましたが、春の採用を徐々に収束する企業が出てきています。採用担当者も気持ちを切り替えて2012年の夏のインターンシップに向けた準備に入りたいところですが、内々定者の意思確認という大事な仕事が残っています。ここで辞退されたらこれまでの努力が水の泡になりますので、採用担当者も気を引き締めてあたるところですが、今シーズンはここにも変化が出てきています。

 

これまで企業の内々定者のフォローというと、懇親会を開催して内々定者同志の顔合わせを行い、同期意識を醸成させていくというのが普通でした。ところが、採用関係費用の予算削減の影響はここまで及んでおり、今年は懇親会もホテルの会場を使う豪華なものは控えめにして、企業内の会議室や研修センターを使って簡単なグループワークを行ったり、社員との親睦会を開いたりと、至ってシンプルになりました。私の仕事仲間には、企業から依頼を受けて内々定者にビジネスマナーやプレゼンテーションの研修を行っている人も居るのですが、今年はパッタリ依頼が減って困ったとのこと。

 

そもそも採用担当者の多くは内定者フォローには余り積極的ではない方が多いように感じます。そうした業務が面倒だからとか予算が必要だからとかではなく、やはり学生には入社するまでは学生生活を伸び伸び過ごして欲しい、という声は昔と変わらずに耳にします。内々定者のフォローの第一の目的は、辞退防止なのですから、こうした不況では辞退者も少なくなり、仮に辞退されても穴埋めの候補者を探すのはそう難しいことではありませんから。

 

一方で金融機関等の営業等、入社してから外務員資格試験を取得しなければならない企業の採用担当者は「内定者教育」に熱心です。この資格は、以前は入社してから勉強を始め、1年目の10月までに取得すれば良かったのですが、それが5月になり、今では入社前の内定期間中に取得するように求める企業が増えてきています。説明上は内々定者全員に強制されるものではないのですが、それを取得した人としない人では、入社しての配属時期・場所が大きく変わってくるので、内々定者としては勉強せざるをえないでしょう。

 

そんな中で、面白い内々定者フォローを行っている企業がありました。内々定者に毎月、奨学金を支給しているのです。金額は月に数万円程度で返却不要で、内定辞退をしたら返却することになっています。採用担当者の方にその意図を尋ねてみたら、「アルバイトを止めてちゃんと勉強をして欲しいからです。留年でもされたら、こちらが大変ですからね。」とのこと。これを始めたところ、思わぬ効果もあったとか。「秘かに辞退を考えている人は、この奨学金を受け取らないんですよ。意図したわけではないのですが、入社意思の格好の踏み絵になっています。笑」なるほどですね。

 

かくの如く、内々定者フォローも、経済環境によって業界によって多様になっておりますが、大学教員の端くれとしてというか、かつて学生だった者としては、学生生活の最後の1年は伸び伸び過ごさせてあげたいものです。それでなくても学生は就職活動の相当の時間と労力と金銭を取られているのですからね。

 

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