第182号:ベストセラー回答の犯人は誰だ!

企業の採用選考が始まり、早くも内々定を得た学生が現れました。今年の桜と同じで、なかなか咲かないと思いきや、チラホラと見え始めたら一気に満開になるのでしょう。その一方で、全く花開く気配を感じさせない応募者もおります。そうした学生の理由はいろいろありますが、面接をしていて感じるのは「ベストセラーの回答」をする学生です。

 

「ベストセラーの回答」とは、採用選考において毎年大流行する回答です。過去いろいろなものが登場しては消えていきましたが、例えば以下のようなものです。

質問:あなたの短所は?

回答:「1つのことに集中すると回りが見えなくなることです。」

⇒往年の超ヒット作ですが、多くの仕事がランダムに入ってくる企業では最も嫌われるタイプです。

 

質問:大学で最も苦労したことは?

回答:「サークル活動で新人勧誘に苦労したことです。」

⇒数年前から増えてきました。

 

質問:あなたが頑張って成果を出したことは?

回答:「チェーンストアの接客アルバイトでランキングを○○店中×位に上げたことです。」

⇒意外とこの経験を持っている人は多いです。努力の成果を出せと言われるのを意識したのでしょう。

 

質問:何故、この業界(金融・サービス業)を志望するのですか?

回答:「商品(モノ)を売るのは誰でも同じですが、形のないサービスは販売するのは自分が評価されるのでやり甲斐があります。」

⇒昨年辺りから出てきた今シーズンのベストセラーです。メーカーの人間が聞いたら怒り心頭です。

 

面接をしていてあまりに同じ回答が多いので統計をとってみたら、80%の学生が同じ回答をしたことがあり驚きました。こうなると怒りより不思議になって興味が湧いてきます。以前は、就活ハウツー本のせいだろう!いや、ネットが普及したからだろう!と議論しておりましたが、最近、また新しい犯人を見つけました。それはなんと採用担当者だったようです。

実は、上述のサービス業での志望動機は、某有名企業の企業セミナーで採用担当者がこの業界のやり甲斐を説明していた文言だったのです。その採用担当者の言葉をそのまま繰り返しているのですね。これは非常に危ないことです。どんなに良い志望動機でも、全ての応募者が話したら平凡なものになります。いや、むしろ、「またこれか。」とマイナスにすらなりかねません。ちょっとだけ言葉を換えれば印象も変わるのですが、今の学生にはそうしたボキャブラリーや知恵が欠如しているのでしょう。

私は就職指導の際に過去何度も言っていることですが、企業セミナーの話をそのまま志望動機にするのは危険です。キッカケにするのは結構ですが、他者と同じこと(それもその企業セミナーで話されたこと)だけを言っていたら、則アウトです。ついでに、これも志望動機のベストセラー回答ですが、「企業セミナーで話した社員の印象が良かったから。」も止めた方が良いです。今年の採用選考はそんなに甘くはありません。

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